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着の身着のままゲーム機(ショートショート)

ここは某ゲーム機生産工場。その片隅で声が聞こえる。

「大丈夫?」
「うん、深夜だし誰もいないはず……」

声が聞こえた方角には机が一つ。その上に梱包されてないゲーム機が二台あるだけ。残業していた社員はそっと耳を澄ませた。

「……私って画面の立ち上がりがほんの少し遅いだけで不良品扱いよ」
「部品交換は?」
「ダメだったの。中も調べたけど原因がわからなかったわ」
「僕は外側にキズありだよ。中に問題はなかったから外側の交換で済むはずだと思うけど」

まさかゲーム機が喋ってる? 
この二台は、最終品質検査でOKがでなかったものだが。

「ねえ、これからどうなると思う?」
「運が悪ければ廃棄かな」
「そんなの嫌! せっかく製品になったんだから、子ども達に遊んでもらって喜んで欲しい……」

話し声はそこで途絶え、辺りに静けさが広がった。

数週間後、梱包されてないゲーム機が工場から児童養護施設に寄付される。訳アリ品の二台だったが、施設内は子供たちの歓喜に包まれた。

(413文字)

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