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長次郎 黒楽茶碗 銘 末広

 楽焼茶碗とは狭義には、田中(楽)家 で作られた茶碗を言うが、轆轤を使わない手捏ねで作られたもの全般をも指すそうな。その大元になった茶碗の一つが、この「長次郎作 黒楽茶碗 銘 末広」のようだ。
 茶道では、
「黒楽茶碗が1番」
 と、何かで読んだ気するが、記憶が正しければ。
  その頂点に位置するいくつかの茶碗の一つに出会えた、と言うことになる。東京国立博物館に通ってよかったと。東京は、その気になれば、その道の1番を目の当たりにすることができる土地である。この時ばかりは東京に住んでいることに感謝である。
 黒楽茶碗とは。こう言うものかと言うことを、茶道を始めた早い時期に確認することができてよかったと思う。さらに、この黒楽茶碗のあと、「大井戸茶碗 有楽井戸」も見ることができた。
 最近は井戸茶碗に、どう言うわけか目が行って仕方がない。ついには「李貞夏作」の井戸茶碗をヤフオクで落札してしまった。手元に届いた井戸茶碗は新作のせいか、深みは感じない。
「まあ、こんな物だろう」
 と、先入観を持ちながら見た「長次郎 黒楽茶碗 銘 末広」は、イメージを若干だが変化させた。まず、色合い。ただの黒では無い。幾重にも沢山の色が重なり合って出来上がった黒っぽい色なのである。深い色合いである。しかし、「見込み」と言われる内側。特に底の方は白っぽくなっていて、色が褪せてしまった感じ。器の外側とは、全くイメージが違う。
 この「末広」の価値は、千利休と共に立ち上げた「楽茶碗」の「初期から次へと移り変わる息吹を感じさせる」と言うような説明があったが、そこに一番の価値があるのだろうと思った。
 茶道を初めて4ヶ月。茶碗の名前だけでも、いろいろ覚えた。ただ、いくつかよくわからないものがあり。たとえば熊川(こもがい)。
 迷宮への旅は、始まったばかり。

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