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「明日会うから。」って、電話に出なかった結果。


2020/7/14(月)

1秒後の選択で運命は分岐していく。


昨日、電話も折り返す事はしなかった。それが何よりも大きな後悔になると思っていなかった。

「次の日会いに行く予定だった」なんて言い訳は口に含んだ瞬間、角砂糖のように甘く、一瞬で溶けてしまう。


歩く速度は僕と同じくらいだったし、30分で三種類ぐらいのおかずを作っちゃうし、お風呂は15分ぐらいで上がる、74歳の範子(のりこ)おばちゃん。

超ド級のせっかちなおばちゃん。


一緒に蚤の市も行けなかったし、貸家のベランダでBBQをすることもできなかった。


けれど、ちょうど今日から3ヶ月前、4日間を2人で一緒に過ごした事が一番濃い思い出だと思う。
野洲川付近を散歩した事、一緒にセカンドストリートへ行って、ロベルタのカバンを見て興奮していた事も、なんでも鑑定団で、"太宰治直筆の絵葉書"がとんでもない金額になって、目が点になってたり、思い出話を4〜5時間聴かせてくれたり。
本当に濃い4日だった。


がんの治療を、「みんなに迷惑を掛けたくないから。」と言って熱が下がらなくなるまで、治療の一切を拒んできた信念の強さ。


体調が悪いなんて悟らせないような笑顔。
目の奥に映る鈍い光。
目尻のシワはマンガの集中線のように濃く、より眼光の強さを強調していた。


わずか2ヶ月ちょっとで2人とも居なくなるなんて思っても無かったな。
愛が深すぎて離れ切れなかったのか。

本当の愛の形ってどんなのが模範解答的正解なのかは定義されてないと思うけど、
きっとああやって最後まで一緒にいようと思える、相互的な愛を与え合う事なんだろうな。

文字で見ると簡単そうで、周りを見ると相当難しいんだと思う。
ましてや何十年も一緒にいると尚更難しそうに思えるが、この二人の姿を見ると、そうは思えなくなってしまう。

「すぐに家連れて帰ってあげるからね、お父さん。もうちょっとだけ待っててね。」

この光景は、どんな感動系YouTubeよりも、どんな映画よりも、愛の尊さを学んだ。

素敵な2人だった。

にしてもほんと。
せめて明日まで待っててよ。
最後までせっかちな人だった。

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