第二回「親愛なる相棒ガイア氏に作品をオススメしてみよう」
久しぶりの投稿だガイア。
まずは第一回の反省をしよう。
俺は自信を持って、君が気に入りそうな映画『第9地区』をオススメした。
世界観、ガジェット、スパロボ……君がけっこう気に入りそうな映画をオススメしたつもりなんだが……
お前は言った、「第9地区は観たけどすんげぇ面白かったっす」
俺はやられたよガイア。お前が既に映画を観ているという想定をしなかった。
ついでに「アレはスパロボじゃない、パワードスーツだ」という君の意見で議論にもなったが、それはまた別の話になるな。
そこで俺は今回、自分個人の好きな映画から選んでみるとしよう。
俺とお前の付き合いは10年。お互いに最近映画館で見た映画が分かるほど以心伝心の出来る仲であるが、趣味は絶妙にズレているだろ(と俺は思っている)。
ならば、俺の好きな映画であれば、ガイアも見たことがないだろうというのを前提に今夜は語ろう。
何を言ってるか分からない? 俺も分からない。
俺には好きな映画が二つ頭に浮かぶ。一つは昔の映画、もう一つは新しい映画。
この選び方は、俺が如何なる時代でも映画を語るための手法だ。
昔の映画でオススメしたいのは『激突』である。
これはサスペンスとスリラーのバリエーションが満載、常に恐怖を感じられる名作だが……
これは既にお前(ガイア)も見ており、俺と語らうほどだ。
ならば、俺が今回紹介するのは新しい映画の方。
『TENET』
『TENET』はクリストファー・ノーラン監督作の、昨年公開されたばかりの映画。
その広大な映像美と、新感覚の映像体験は映画好きなら必見のものだ。
主人公は“名もなき男”。特殊部隊の工作員である彼は極秘任務中にある組織から任務のスカウトを受ける。
任務内容は「未来人からの侵攻阻止」。キーは第三次世界大戦の起こる未来から送られたアイテムと、「TENET」というワード。
相棒に何でも屋“ニール”を連れ、未来人と通じるロシアの武器商人とコンタクトを行うため、“名もなき男”は武器商人の妻である“キャサリン”に近づく。しかし任務遂行を阻むかのごとく、未来から送られたモノが次々と襲いかかる──
あらすじを上げたとおり、物語の進行自体はシンプルな作りだ。頼れるが怪しい動きもする相棒、美人のワケありヒロイン……古きよきクールなサスペンス映画の体を、そのまま使っている。ムダのない話運びと危ういアクシデント、それらを画面フルに使ったアクションで進行し、ややこしいSFギミック気にせずとも物語に没入できる。俺はこの物語のあるポイントが好きだが、それはあとで話す。
SFギミックを気にせずともと言ったが、この映画は他にない要素があり、非常に見所があるんだ。
この作品はいわゆるタイムトラベルSFであるが、この作品の時間逆行とはモノ自体を逆行させるものである。弾丸は拳銃へと戻り、弾跡に破片は戻っていき、事故っていた車は起き上がって追跡を始め、人は爆風に吸い込まれ、世界は逆方向に回る……
詳しく言うと、あるポイントを通って自身の時間軸をこの世界の時間軸と逆にすることが出来る。自身から見た世界は全てが逆再生の動きとなり、世界の観測する自身は逆再生となるっていうことだ。
逆再生の物や人、それらが順行で動く世界と重なり、新しいアクションシーンを、そしてドラマを生み出す。逃走は追跡に変わり、防御行動は攻撃行動に反転する……あらゆるアクションが、2度目の視聴では違った意味を持つ。
1度見ただけでは軽く酔ってしまうが、2度3度の視聴では新たなアクション体系を発掘できるぞ。
このSFギミックに細かいルールがあるのも特徴だ。失敗すれば消滅、死亡すらありえる注意事項だらけだ。
ポスターで登場人物の着けている呼吸器にもその意味があり、ある理論によって呼吸器は必須アイテムとなっている。なければ死。生死が表裏一体の緊迫したアクションが逆行世界で繰り広げられる(ついでに言うと、呼吸器の有無で対象が順行か逆行か分かりやすく見れる)
そして俺がこの映画でオススメしたいポイントは、この時間逆行とサスペンスの中で決して揺るがぬ友情だ。
とある人物がいる。彼はとある男の信頼と、友情を得ていた。彼はそれに報いるため、逆行先でどんな結果が待ってようが任務遂行を止めない。
彼はこの任務のことを、こう語る。
これは友情の終わりであり、君にとって始まりであると。
彼が投げかけた台詞の中にどれほどのドラマや思い出、決意が込められているか計り知れない。
この映画において登場人物の背景事情は一切語られない。主人公ですら最後まで来歴は不明だ。
だからこそ考察が捗る。そして捗る度、彼の来歴に胸打たれ漢泣きが出来る。
斬新なSFアクション映像(フルスクリーン)、そして友情に厚き男が命を掛けて世界を救おうとする物語……難解な印象と裏腹に、観客の心を掴む構成がこの映画のなってるんだ。
物語の構成自体は複雑だ。いうなれば、起承転結でなく起承転承起なのだから。
この映画の結末は終わりではない。始まりなのだ。2人の男の活躍によって、この映画は幕開ける。
ガイアにも是非、圧巻の映像美と漢泣きな骨太ストーリーの始動を体感させてみたい。
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