8日目:マジョリーヌ先生の思い出
わたしが「魔女」を名乗ろうというとき、ロールモデルがあります。
わたしが通っていた田舎の小学校には「マジョリーヌ先生」と呼ばれていた先生がいました。
わたしが低学年だった数年のあいだ、担任でもなかったのですが、わたしはマジョリーヌ先生が大好きでよく会いに行っていました。
いまの基準からいえばまだお若いはずです。でも、白髪交じりの長い髪と、カジュアルでかわいらしい服装の、お年を召した少女のようなマジョリーヌ先生は、幼いわたしには本当の魔女に見えました。
先生がいつ、どうして「マジョリーヌ」とあだ名されたかはわかりません。
でも、あの田んぼの真ん中の、文化や教養とはまるで縁のない小学校のなかで、その称号は不思議と説得力があったのです。
先生が現代魔術の実践者だったかどうかはわかりませんし、あの時代の田舎でそういった情報にアクセスできる可能性を思えば、魔女と呼ばれてはいてもごく普通の女性教師で、子どもたちの勝手なイメージを優しく受け止めてくれていたのだと思うほうが自然です。
しかし、子どもたちに「魔女」と呼ばれて慕われる以上に、そのひとの本質が魔女であることを証明する方法があるでしょうか。
先生は確かにわたしたちに魔法をかけたのです。そのふるまいや、生き方によって、どんな時代のどんな場所でも、魔女になることができると教えてくれました。
魔女になるのに資格はいりません。条件もありません。
誰かに「この人は魔女なのだ」と思わせ、魔女と呼ばれたとき、ひとは魔女になれるのです。
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