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術後29日目 もう“見栄”は張らない 銭湯で悲願達成

ついに、この日が来た!小っ恥ずかしいが、一生忘れられない日のひとつと言っても過言ではない日が。

近所の銭湯へ。脱衣場でパンツ一丁になって、さあ、全部脱ごうというあの瞬間、もう三十数年来の、あのクセが、無意識に出そうになり、手を慌てて引っ込めた。

そう。「見栄剥き」をしそうになったのだ。それは、もう無意識なのに、明らかにコンプレックスを抱く瞬間だった。

今回は、思い切ってパンツを下ろし、何もしない。恐る恐る股間を見ると、しっかりとズルムケている。この瞬間、自分との長年の闘いに勝ったような気がした。

包茎の男性以外には、本当にくだらない、そしてキモいとさえ思われることだとは承知している。しかし、その小さなことは、とてつもなく重くのしかかるコンプレックスだった。

そのコンプレックス自体が意味がないとかいう人も多いだろう。でも、そうだったんだから仕方ない。現に、銭湯のほぼ全ての男が全部剥けているのは、「見栄剥き」が少なくない証拠だろう。

さあ、浴場へ。タオルは手に持ち、体の横に。そう、前は隠さず胸を張って。もちろん誰も見てはいないのだが、自分の中では卒業式で証書を受け取りに壇上に向かう感じだ。

風呂の後は、脱衣場にある自販機で、フルーツ牛乳。腰に手を当てて、前はノーガードでごくっごくっとやる。気持ちいい!なんとも形容し難い爽快感!他人にとっては小さな小さな、でも長年コンプレックスだったものが取れた瞬間は、一生の記念だ。

五十半ばにして。手術して、本当によかった。つまらないコンプレックス、そう、本来つまらないだけに、こんなものを手放せて、清々した。気持ちいい日曜日だった。

あっ、でもまだ糸が少し残ってるんだった笑 闘いは、あと少しだけ、続く。



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