手術：イソギンチャクみたいなやつが取れた

手術室までは自分で歩いていった

　手術当日、朝一番の手術だったので朝8時くらいから準備。用意された手術着に着替える。

　マジックテープで前後面が張り付けられているんですね。
以前の職場の上司が結石を破砕治療したときに、着ているものをバッと引っぺがされてびっくりしたと話していたけれど、こういうことか。

　手術当日は夫が立ち会ってくれることになっていたので、手術前に夫に会って話す。設備が良いこと、お隣のおばあちゃんのお話がかわいいこと、ご飯が良かったこと。

　よくドラマや漫画であるような、ベッドにねっころがって手術室に行くのを想像してたけど、夫と看護師さんと3人で手術室が集合しているエリアの前まで一緒に歩いて行った。

　何てことはないと思っていたけれど、扉の前で夫と別れるときは、やはり少し緊張した。滅多にないと担当医の方は言うけれど、膀胱に穴でも開いたら、実は病理がとても深くて、とか。心配しすぎてもしょうがない、と心を落ち着かせる。

　体に金属、アートメイクなどないこと等々を最終確認して手術室エリアの中へ歩いてはいる。手術室エリアには、複数の手術室が入っていて、中央にお部屋のようなものが1つあった。
「手術室ってこんな風になっているんですねー！」と思わず看護師さんに話しかけてしまった。想像とだいぶ違う。おそらく、私の手術のメニューだからというのもあるだろうが、昨日お会いした麻酔科の先生に手術台のある部屋に迎え入れられた。結構広かった気がする。

麻酔は本当にすごい。モニターで手術の経過観察。

　手術の準備が始まる。まずは麻酔。私は下半身麻酔なので、背中にまずは局所麻酔。

　「ちくっとしますー。多分これが一番ちくっとする段階です」と言われ身構えたが、特段痛くなく終了。しばらくして、どんな方法だったか忘れたが、局所麻酔が効いているか確認される。ちょっと痛かったので、もう一度入れてもらう。
　2度目確認されたとき、微妙に感覚がある気はしたがさっきよりもなかったので、OKを出した。いよいよ下半身麻酔。

　麻酔が入る。もちろん入ってく間隔はないが。しばらくして冷たい氷袋をつかって刺激の感覚があるか確認される。見事に下半身だけなかった。もはやどうなっているかわからない状態。さらに驚いたのは、「足がびくっとします。でもこれは麻酔で意図的に行っています」みたいなことを言われたこと。そして足が本当に動いた。これには驚愕した。

麻酔ってすごい。これに尽きる。

感動するとともに、恐ろしさも覚える。すごいものを人間は開発してきたものだ。

 　麻酔が効くと、手術を担当する先生方が入ってくる。これまで診療にあたってくれた先生が挨拶をしてくれる。ちょっと安心する。

「よろしくお願いします」「手術は●●、●●のように～」と最終申し合わせみたいなものが行われて、手術開始。もはや、下半身には何の感覚もないので何が始まっているか皆目見当もつかなかったのだけれど、気持ちに余裕が出てきて周りを見回していたら、頭上斜め下に手術モニターが！！

　じっと見入る。腫瘍それ自体をとったところは見えなかったけれど、わっかのついた棒のようなものが見え、モーター音がすると、粘膜の壁が焼かれたようになっていくのが見えた。もうそこからは食い入るようにモニターを見る。

　その後も足元の方でモーター音がすると、粘膜が削られ、削られたところが白くなり、の繰り返し。そうしてる間に手術が終わった。麻酔に30分超、手術に1時間ちょっとくらいだっただろうか。

「お疲れ様でした」と声をかけられて、手術が終わったことを知る。
「無事に終わりましたよ」

     病棟用のベッドに移されて、天井を見ながら手術エリアをでる。

「これ、とれたやつです」と先生が、小さな容器に入ったらピンク色の物体を見せてくれた。ちっちゃな、なんか海にいそうな。

「これを病理検査に出しますね」

   たぶん、癌なんだとは思うけど、まだ良性である希望は捨てられなかった。

   もう一つエリアを出たところで夫の笑顔がにゅっと、視界に入ってきた。

「お疲れさま」

    後から聞くと、私が手術室を出るまでの間に先生から夫への説明があったらしい。

大したことないと自分に言い聞かせてたけど、いざ夫の顔を見たら泣きそうになった。（無事にもう一度会えてよかった）

    ここで涙を流すなんて、大げさ過ぎる気がして、なんとか目の中に留めた。病棟に移動する。 この日は絶対安静。絶対安静、食事厳禁みたいな札がベッドに貼られる。

   朝から何も食べてないのに、1日何も食べずに持つんだろうかと心配になったけど、点滴が入ってると、お腹すかないものなんですね。 5時間ほど経つと少しずつ下半身が動くようになってきた。少し熱があるらしかった。ずっと寝っ転がってるだけだし、眠くなるのかしらと思ってたけど、すっと、眠りに入った。

  この日は朝から夫がずっと側で過ごしてくれて、仕事もあるのに申し訳ないと思っていた、けれどやはりありがたかった。

 手術後の入院期間へ。