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ファンデルワールス力【改】

 分子どうしの間に働く引力 を ファンデルワールス力 といいます。分子間の水素結合と合わせて 分子間力 とよびます。

 このファンデルワールス力は、共有結合に比べて非常に弱い結びつきです。二酸化炭素 CO2 といった分子でも、ファンデルワールス力によって多数の分子が集まると固体になります。

 ファンデルワールス力が働く原因は、瞬間的に生じる電荷の偏り と捉えてよいです。電気的に中性な分子内でも電子は原子核の周りを動いています。ある瞬間、分子内の電子に注目すると、電子の分布には偏り が見られます。

電子の分布の偏り

 どんな分子でも、わずかに正に帯電した部分と負に帯電した部分が生じます。

 瞬間的な電子の分布の偏りによって、分子間に引力 が働きます。分子どうしが接触するほど接近したときに、1つの分子の電荷の偏りがもう1つの分子の電荷の偏りを生じさせ、分子間に電気的な引力が働くと考えられます。

分子間の電気的な引力

 分子量が大きい分子ほどファンデルワールス力が大きいと言われます。これについて少し考えてみましょう。

 一般に、分子量の大きい分子は電子をたくさん持っています。分子の持つ電子の数が多いということは、それだけ瞬間的な電荷の偏りが生じやすくなるということです。よって、分子量が大きい分子ほどファンデルワールス力が大きいと言えます。ちなみに、分子量とは分子の相対的な質量を表したものです。

分子量とファンデルワールス力

 構造が似た分子では、分子量が大きいほどファンデルワールス力が大きくなります。ファンデルワールス力が大きくなると、分子と分子を引き離すためにより多くのエネルギーが必要になります。温度を高くしないと、液体から気体に変わりません。よって沸点が高くなります

 例えば、貴ガス分子を比べると、分子量が増加するにつれて沸点は高くなります。これはハロゲン分子でも同じです。フッ素F2、塩素Cl2、臭素Br2、ヨウ素I2の順に、分子量は高くなり、沸点も高くなります。

ハロゲンの単体の融点

 また、分子量の値が近いフッ素F2と塩化水素HClを比べると、塩化水素の方が沸点が高いです。これは、塩化水素が極性分子であるからです。無極性分子に比べて、極性分子の方が電荷の偏りが大きく、分子間力が強くなるためです。

分子の極性と沸点


まとめ

〇 ファンデルワールス力・・・どのような分子の間にも働く弱い引力。

〇 分子量が大きい分子は、ファンデルワールス力が大きい。

〇 極性分子の方が電荷の偏りが大きく、分子間力は強くなる。

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