書評:Name Reactions
読んだ本
Jie Jack Li 著、Name Reactions: A Collection of Detailed Mechanisms and Synthetic Applications、第4版、Springer、2009年、621頁.
分野
有機化学
対象
人名反応を調べたい人
評価
難易度:無評価
文体:無評価
内容:悪 ★★☆☆☆ 良
総合評価:★★☆☆☆
論文を調べるだけの存在
内容紹介
This book differs from others on name reactions in organic chemistry by focusing on their mechanisms. It covers over 300 classical as well as contemporary name reactions. Biographical sketches for the chemists who discovered or developed those name reactions have been included. Each reaction is delineated by its detailed step-by-step, electron-pushing mechanism, supplemented with the original and the latest references, especially review articles. This book contains major improvements over the previous edition and the subject index is significantly expanded. (1)
感想
人名反応の本は、有機化学系学術書の中で言えば比較的レッドオーシャン (というのも憚られるが) の領域であり、和書洋書に限らず多くの書籍が発行されている (例えば「書評:有機人名反応|化学書評」)。当書はSpringerから"人名反応"の名で発行される書籍で、私が有しているのは第4版だが、現在はどうやら第6版まででているらしい。であるからして、世間の評価は高いようなのだが、私には当書のどこが人気なのかいまいち理解できない。
確かに、比較的コンパクトなサイズに300種の人名反応がまとめられている点は評価できるが、内容は微妙である。反応の説明はあってないようなもので、4,5行書いていればまし、なんなら説明文がないものまである (読み物ではないので、難易度と文体は無評価)。反応機構に関しても、副題には"Detailed Mechanisms"と書かれているが、私にはとてもDetailedとは思えない。一般的な有機反応ならまだいいのだが、遷移金属触媒反応の機構は明らかな手抜きである。実験例に関しては複数実例がのっているのだが、反応温度、反応時間、等量といった重要な情報が抜けているものがほとんどで、結局元文献にわざわざ見にいく必要がある。
この本の使い道としては、反応の重要文献を探すためだけのツール、というのが私の現状である (そういう観点では地味に使えなくもないので★2)。ただ、現在ではChem-Stationというサイトによって参考論文も簡単に調べられるようになっているので、価値は暴落中である (この点でいえば、すべての人名反応の書籍はChem-Stationによって存在が危ぶまれているといえる)。第6版でどれだけ変化したのかは不明。
購入
大学の古本市で確か100円で購入した。はっきり言えば、一万以上だして購入するものではない。せめて、一度図書館などで確認するべきだろう。もし買うのであれば、amazonなら第6版のペーパーバックが現在のところ最安である (2024/10/22, 8573円)。
第4版
第6版
参考サイト
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