ドナルド・トランプ元大統領に対する家宅捜索の司法手続きがアメリカの民主主義制度の崩壊を意味する理由

2022年8月8日に行われたアメリカ45代大統領ドナルド・トランプに対する家宅捜索に関する詳細が徐々に明らかにされるにつれ、アメリカ政府が民主主義国家として崩壊していることを意味するほどの内容が明らかになってきた。

民主主義制度の崩壊を意味することとは、トランプの別荘への家宅捜索の令状について、トランプの弁護士によって提示を要請されたにも関わらず、遠くから見えないように、見せないように一瞬見せただけで済ませたためなのだ。
このことが何を意味するのか、何故民主主義制度の崩壊を意味するのかについて、解説したい。

民主主義制度とは、国民が国家主権を持ち、国民が国の在り方を決める制度だ。
こう書くと、世界中のどの国を見ても民主主義制度が成立している国がないので心底悲しい気持ちになるのだが、その気持ちをこらえて書き進めることとしよう。

民主主義の国では国民の代表である国会議員が作った法律を国の統治ルールにするのである。
統治ルールの中で重要なのが治安の維持であり、その為に存在するのが刑法や刑事訴訟法だ。
これはつまり、刑法では「どういう行為が犯罪にあたるのか」が決められており、刑事訴訟法では「犯罪を犯したかどうかをどのような手続きで裁かれるのか」が決められている。
これらを合わせて、「犯罪を犯した人は犯した罪によってルールに則って刑罰を科して罰を与えようね」というルールが定められているのだ。

これが重要な意味は、このルールがなされなかったことを想像するとわかりやすい。
例えば、犯罪を犯したり、犯したかもしれないと疑われた時には、警察や検察に取り調べを受けるのだが、そのときに「拷問をして犯罪を犯したと言わせるようなことをしてはならない」というのが刑事手続きを書いた刑事訴訟法に書いてあるのだ。
たとえあなたが盗みを働いていないにも関わらず、いきなり警察に「お前!盗んだだろ!」と言われていきなり刑務所に連れていかれて、拷問部屋に何日も体中をこん棒で叩かれながら、「盗んだと言え!盗んだと認めろ!」と言われたらどうか。
「そんなことをされるなんて、とんでもない!」と思うはずだ。
そういった、とんでもない逮捕がされることがないように、「拷問をして犯罪を犯したと言わせるようなことをしてはならない」ということが定められているのだ。

その他にも様々なルールが定められており、「犯罪を犯したり、犯した可能性があっても、適正な手続きに従って裁きを受ける」というのが民主主義国家の大原則なのだ。

そして今回、トランプを襲った刑事手続きでは、日本国憲法33条や日本の刑事訴訟法でも、当然アメリカでもほぼ同様に定められている通り、「現行犯逮捕などの例外を除けば、裁判官が発行する令状によらなければ捜索などを受けることがない。そしてその捜索などの場合には令状が提示されなければならない。」のだ。
これはつまり、例えば警察や検察があなたの家などに押し寄せてきた場合には、「あなたには〇〇の罪に対して容疑が課せられており、それに伴って、××に関する証拠物に対して捜索を受けることが裁判所によって命じられています」と説明を受ける権利があなたにはあるのだ!
これはつまり、突然警察に犯罪の疑いをかけられたときに、あなたが現在何の罪に対して疑いをかけられているのかを明確に示されないといけないことを民主主義国家のルールに定められているのだ。
これを明確に示されることで、「私にはその罪を犯していない」と反論することができるのだ。

この反論する機会が与えられているというのは非常に重要なのであり、犯罪の嫌疑がかけられた者の人権は民主主義国家で初めて獲得したといってよいものなのだ。
民主主義国家を宣言していなかった時代には、何の罪に対して疑いをかけられているのかを示さずに国家権力が好き放題に捜査ができたのだ。
民主主義国家では、そのようなことを止めさせて刑事手続きの時にルールを定められているのだ。

後日、この令状はトランプ側の弁護士が裁判所に請求したことにより、仕方なく開示されたという。
この重大な違法行為を左派メディアは報道しない自由を使って無視し続けるだろう。
そういった司法上のルールも見ながら、ニュースを見る視点を持つと真実が透けて見えてくるはずだ。

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