深田萌絵さん裁判の2022年6月17日の第一審判決に見る日本の社会の闇

民事訴訟というものは、個人と個人の利害の争いを解決するための裁判である。
例えば、AさんはBさんに貸した金が返ってこないので、何とかして貸した金を取り返したいとしよう。
日本では自力救済を禁じられている。
これはつまり、AさんはBさんから貸した金を返してもらうために、AさんがBさんから強引にお金を奪ったりすることは禁止されているのだ。
よって、Aさんは裁判所を通じてBさんに貸した金を返してもらうよう、請求することになる。

このように、民事訴訟は通常は個人と個人の争いだ。
だから、普通の民訴訴訟はある意味、「単なるAさんとBさんの喧嘩であり、AさんやBさん以外の人には関係ないし、どうでもいい」ものだ。

だが、深田萌絵さんの裁判は違う。
われわれ日本人にとって他人事ではないのだ。
中国共産党は国家権力とほぼすべての国営的企業との総力戦で、日本に対して経済戦争を仕掛けてきており、日本の大企業や中小企業などの、ありとあらゆる財産や技術を盗みに来ている。
殆どの日本企業は財産や技術を盗まれて泣き寝入りしている。
そんな中、深田萌絵さんはあきらめずに10年以上、裁判という場を通じて戦い続けているのだ。
つまり、彼女が行っている民事訴訟は、単なる個人と個人の争いではなく、多くの泣き寝入りをした日本の被害者たちに代わって、中国共産党という巨大組織である国家権力との戦いを続けているというものなのだ。

今回、深田萌絵さんの裁判の第一審の判決が2022年6月17日に東京地方裁判所より言い渡されたので、その中身と意味について考察してみたい。
なお、この裁判の意義やいきさつについては下記の記事に詳細を記載しているので、是非とも参照されたい。



2022年6月17日の法廷で行われたのは、第一審の判決言い渡しである。
日本の裁判は3ラウンド制の戦いであり、その第1ラウンドの勝敗結果が裁判所より発表されたというものだ。
裁判所のルール通り、冒頭から裁判長が第一審の判決を以下の通り言い渡した。

「主文、原告の請求をいずれも棄却する。・・・判決主文の理由については(口頭での説明を)省略する。」

この日、傍聴席には52席のほぼすべてが埋まり、多くの者が見守る中で、たったこれだけの内容が裁判長の口から告げられただけであった。
これまでの戦いを見守ってきた者たちにとっては「たったこれだけなのか」と拍子抜けしたことだろう。
深田萌絵さんは「中国スパイが主張していた『深田萌絵は詐欺師だ、貸した金を返せ』という暴言が嘘であったことが裁判所を通じて証明できたことはうれしい。しかし、技術は合法的に盗まれたままであり、何も救済されなかった。」と語った。

今回の判決は要約すると、原告が「貸した金を返せ」と請求したことに対し、裁判所は「『貸した金を返せ』という原告の請求は認められません」と告げただけなのである。
つまり、深田萌絵さんが最も訴えたい中国スパイによるスパイ行為に対する制裁は何も叶えられていないのである。
本来であれば、深田萌絵さんは中国スパイによるスパイ行為に対して、①損害賠償請求と、②スパイ行為に対する刑事処罰に加え、③今後、中国スパイによるスパイ被害を阻止するような日本政府による措置を求めたかっただろう。
しかし、裁判制度では①と②しか求めることはできず、しかも深田萌絵さんが中国スパイを日本の検察に刑事告訴しても、日本の検察はその請求を無視し続けたため、事実上、②の刑事処罰を請求できない状態に等しい。
そして日本の民事訴訟は認められる請求内容が非常に限られているため、①の深田萌絵さんが追った被害を裁判所を通して取り返すのは非常に難しい。
加えて、スパイに盗まれた軍事技術が既に中国人民解放軍に利用されている状態は元に戻すことはできない。

深田萌絵さんらは証人尋問を通じて、裁判の背景となっている中国スパイの実態に関する証拠を提出し、証言も行ってきた。
本来であれば、それらの事実を通じて、日本の検察や政府などの国家機関が②の刑事手続きや③の政府による対処が行われることが期待されるはずだ。
しかし、現在のところ、そのような刑事的な動きや、政府機関による動きは見られない。

つまり、殆ど日本の司法制度の欠陥と、日本の警察、検察および裁判所という国家権力が中国共産党によってほぼ支配されているという闇によって、彼女の請求である①②でさえ、どちらも認められていないという構造的問題があるのだ。
加えて、正常な政府としての③は機能していないようだ。

深田萌絵さんは中国共産党による日本への経済戦争における戦いをほとんど一人で戦っている。
深田萌絵さんの裁判はわれわれ日本人にとって中国との経済的な代理戦争であり、彼女は女手一つで中国共産党という国家権力とほぼ一人で戦っているのである。
この裁判の存在を通じて、われわれは中国から仕掛けられ続けている戦争の現実を知らなければならない。

2022年6月17日の第一審の勝訴判決は、ただ単に相手からの攻撃を退けただけであり、反撃もしておらず、攻撃もしていない。
これはまるで、ありとあらゆる攻撃を仕掛けてくる中国人民解放軍に対して、軍隊として何も手を出せずに苦しむ自衛隊の姿を見ているかのようであった。
そんな中でも彼女は米国の政府機関と協力して刑事手続きを行っていると語ってくれており、今後の反撃を期待したい。

深田萌絵さんが一人で戦ってくれている日本と中国の代理戦争はまだまだ続くだろう。
筆者は金融業界を通じて、様々な企業が中国に騙されて被害にあい、泣き寝入りをするだけの状況を20年ほど見てきており、ますます被害が大きくなる現実を目の当たりにし、とても悔しい思いをし続けてきた。
そんな中で、彼女のように勇敢に戦う者を初めて見たのだ。
まずは、この場を借りて、彼女がわれわれに変わって勇敢に戦ってくれていることに深く御礼を申し上げたい。


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