一夜明けてさらに深田萌絵さん裁判の2022年6月17日の第一審判決に見る日本社会の深い闇

昨日、深田萌絵さんの裁判の第一審判決について衝撃的な日本社会の闇について記載させていただいた。

だが、一夜明けて深田さん自身から裁判結果について改めて開示されて、筆者はさらに深い闇が見えて衝撃を受けた。
そのことについて、今回は改めて述べたいと思う。

筆者は深田さんの裁判を傍聴していた。
傍聴していたのは民事裁判である。
民事裁判はかねてから、裁判手続きについて問題だと指摘されていた。
それは、刑事裁判では必ず裁判の場で何について争われているかが裁判官から口頭で告げられ、それに対して、裁判当事者(訴えている側と訴えられている側)が口頭で返答するという手続きが行われる。
それによって、裁判を傍聴する者たちによって公開された場においてやり取りが行われるために、どういった裁判のやり取りが行われているかがわかるわけである。
これによって、きちっと裁判がどのような手続きに従って行われているかがわかる。
仮に、この口頭でのやり取りが公開の場で行われなかった場合、一体どういった証拠に基づいて裁判所が判決を下したかわからなくなる。
裁判手続きが一部でも隠された場合、やってもいない罪について、何の証拠もなしに罪を認められてしまうということが起こりかねない。
日本国憲法では、公正な裁判を受ける権利を重要な人権であると位置づけた上で、裁判手続きが隠されたような秘密裁判を禁止している。

しかし、民事裁判は基本的には口頭でやり取りを行わず、お互いの主張が書面で行われる。
これはどういうことかというと、裁判の当事者(訴える側=原告と訴えられる側=被告)がそれぞれ主張したいことを紙に書いて裁判所にそれぞれ提出する。
そして裁判所では事前に紙で提出した主張を正式に「主張するかどうか」だけを聞かれる。
そのため、裁判所を傍聴する者には、その書面は開示されず、お互いの当事者がそれぞれ何を主張したのかはわからず、傍聴者が目にする光景はおおむね以下の通りになる。

裁判長「原告にお聞きします。提出した書面(紙に書いて提出した主張したい内容)について、主張しますか?」
原告「はい、主張します」
裁判長「被告にお聞きします。提出した書面について、主張しますか?」
被告「はい、主張します」
裁判所「では、本日はこれにて終了します」

読者の皆さんはこのやり取りを聞いて、何が争われているか理解できただろうか?
何が争われているかを理解した上で、どこの手続に不備があったか、裁判所が正常に機能しているかどうかを判断できただろうか?

どちらもできるはずがない。
裁判を傍聴した者には、原告が何を請求したか、被告は何を反論したか、原告と被告の主張をどのような基準で裁判所が判断して結論を出したのか、それらすべてにおいて何もかもが全く分からない。

正にこの問題は日本でずっと放置されてきた。
本来であれば、裁判所で不当なやり取りが行われていたとしても、傍聴者が理解できる内容が公開されていれば、たとえ当事者が不服を主張しなかったとしても、傍聴者である国民が国に対して司法制度に不服を主張できるわけだ。
しかし、そのようなことは民事訴訟においては、そもそも期待できない制度設計になっているのだ。
そして、この深田萌絵さんの裁判で信じられないことが起きていたのだ。

深田さんは今回の裁判で、実際には中国スパイである原告は以下の①と②を主張し、被告である深田さんは③を反訴として主張したということだった。
※当初、筆者は傍聴者として②だけだと思っていたし、裁判上のやり取りでは②しかないようにしか見えなかった。
①深田さんは詐欺師である
②貸した金を返せ
③原告は中国スパイである

①と③について、具体的に何を請求していたか、金を払え(損害賠償請求)なのか、他の請求なのかは筆者にはわからないが、具体的に裁判所の公開の法廷で裁判長から告げられた判決は以下の通りであった。

「主文、原告の請求をいずれも棄却する。・・・判決主文の理由については(口頭での説明を)省略する。」

お分かりだろうか。
何かおかしくないだろうか。
「・・・原告の請求をいずれも棄却する。・・・」なのである。
つまり、被告の請求について、裁判官は何も言わなかったのである。

筆者は昨日、そもそもの当事者の請求内容を知らないまま、裁判を傍聴してきた。
それもそのはずである。
民事裁判では、先に説明したとおり、具体的にそれぞれの当事者が何を請求しているかが裁判の傍聴者には開示されないのだ。
裁判のやり取りのほとんどは、「金を返せ」「金は借りていない」だった。
被告である深田さんらは、原告が中国スパイであることを口頭で主張していたが、裁判官らは一切そのことに関する質問を行っていなかったため、傍聴者である筆者には、「②貸した金を返せ」という請求についてだけが争われているように思ったのだ。
通常、「貸した金を返せ」という請求をするときは、併せて「訴訟費用も払え」という請求をするため、この複数の請求について「・・・いずれも棄却する・・・」となった、つまり、これらの請求が認められないという結論となったのだと筆者は思ったのだ。

だが、実際に裁判所で行われていたやり取りは全く違ったことがわかった。
なんと、原告の二つの請求である、「①深田さんは詐欺師である」という請求と「②貸した金を返せ」という請求のいずれもが棄却されたということであり、被告である深田さんが主張する「③原告は中国のスパイである」という請求については、裁判所は何も言い渡さなかったのである。
これは、正当に裁判を受ける権利という、憲法で保障された重要な人権(憲法32条)を全く無視したものであると言わざるを得ない。

裁判所はかつて、警察や検察という捜査組織が違法な捜査の実態を糾弾したことがある。
昭和53年9月7日の最高裁判所判例だ。
ある者が犯罪を行った時の捜査で違法な捜査を行い、しかもその違法な捜査を行った事実を組織的に隠蔽した。
その刑事裁判の場において、違法捜査の事実が発覚したにもかかわらず、警察や検察は全く悪いと思っておらず、そもそも犯罪捜査を適法に行う気がないという態度を示したのだ。
それに対して最高裁判所の裁判官は警察などの捜査機関に対して、「お前ら!法律を守る気がないだろ!そんな違法な捜査は許さん!こんな違法な捜査で有罪を認めたら、将来もまた違法捜査をするだろ!そんな前例は認めさせない!こんな違法捜査の証拠なんか認めん!」と言ったのだ。

かつて、このような判決を裁判所がしていたことは忘れてはならない。
その上で、今回の深田萌絵さんの裁判で、深田さんが主張した請求について、何の返答もしなかった裁判所の行為はどうだろうか。
深田さんはこの裁判所の行為について「おそらく政治的な圧力によって、私の請求はなかったことにされた」と語った。
これは正に、民事訴訟の制度的欠陥を利用して、政治的圧力によって国家権力が裁判所にも圧力をかけて揉み消したということに他ならない。

日本の国家権力として立法(国会)、行政(内閣)、司法(裁判所)という三権が分立して存在しており、裁判所というのは、民主主義の中でもっとも権利を侵害されがちな少数派の権利を守るための最後の牙城であると言われている。
そのため、裁判所というのは国会や内閣などの政治とはいかなる接点を持ってはならず、影響を受けてもならないというのが最高裁判所も判例で述べているところである(最大判平成10年12月1日)。
しかも最高裁は、裁判官が中立・公正であることは当然だし、裁判官が中立・公正であるかどうかについて、どのように「国民から見られる」かについても、もとても重要だと断定している。
さて、このような視点から、深田さんの裁判はどのように映るだろうか。

深田さんは自らの個人的な情報をさらけだすことで、このような重大な国家犯罪の存在をわれわれ日本人に教えてくれているのだ。
逆に、深田さんがこの事実を告白してくれなければ、深田さん裁判の当事者ではないわれわれ一般国民は裁判所が政治権力に加担して中国スパイによる犯罪を隠蔽したという事実を知ることさえ出来なかったということだ。
これを許していては、この国はますます法治国家ではなくなる。
これ以上、民主主義の腐敗を許してはならないのである。

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