[清水量子の解説] はじめに(無料)

記事の紹介

「清水量子」というのは、Twitter (X)等で「清水本」と呼ばれている
清水明「新版 量子論の基礎」のことを指します。
記事のタイトルの文字数の都合と、清水先生は熱力学の本も
書かれていること、および、堀田先生の本が「堀田量子」
と呼ばれていることから、私の記事では「清水量子」と呼ぶこと
にします。
この教科書は、清水先生が教養学部(理学部ではない!)で行った
講義をもとに書かれた教科書で、
それまでのシュレーディンガ方程式中心の天下り記述ではなく、
状態ベクトルと物理量(可観測量)の関係を中心に
量子力学の「理論としての要請」から演繹的に記述されています。
「要請」は以下の5つで、第3章で説明されます。
 ・純粋状態は、あるヒルベルト空間での規格化された射線で表される
 ・可観測量は、あるヒルベルト空間上の自己共役演算子で表される
 ・ボルンの確率規則
 ・閉じた量子系の時間発展は、シュレーディンガ方程式で記述される
 ・射影仮説
  (注:正準交換関係は、含まれません)
そして、最終章の前の第8章において、
古典物理学や相対論に未知の「隠れた変数」を追加して拡張した
どんな「局所実在論」を創っても、
測定対象が、アインシュタインらのEPR論文で言う「実在」である限り
測定器のパラメータと測定値の相関の範囲に限界があること
=「ベルの不等式」が成り立つこと
が言えます。
そして、この「ベルの不等式」を導出して
それが、自然界では成り立っていない(アスペの実験結果)ことから
局所実在論は、正しく自然を記述しないこと、
=量子力学が局所実在論より「広い理論」であることを証明しています。
これは、ヒトが無意識に認めている「素朴な実在」は
「自然界では存在しない」ことを、意味します。

まさに、量子力学の教科書の21世紀の幕開けとなったものと言えます。

密度行列、テンソル積について

この本では、密度行列やテンソル積は使わず(それがウリと思います)
混合状態は、必要最小限の言及にとどめ、言葉での説明で、
2つの状態ベクトルを合成した状態は、|a,b> とかの表記で
説明しています。
これからの記事では、他の本や文献も読む方が多いことを想定して、
必要に応じて「密度行列」や「テンソル積」も記述します。

前提知識

1.微分・積分
    高校程度で十分です。
    (水素原子を解く問題は、出てきません)
2.線形代数
    第3章から初歩の線形代数の理解が必要です(内積空間もですが)
    ジョルダン標準形の理解は不要です。
    線形代数の教科書を読むか、Youtube等で勉強して下さい
    下は、私のブログで、線形代数を解説した記事です:
https://kafukanoochan.hatenablog.com/archive/category/%E9%87%8F%E5%AD%90%E5%8A%9B%E5%AD%A6%E3%81%AE%E7%90%86%E8%A7%A3%E3%81%AE%E3%81%9F%E3%82%81%E3%81%AB%28%E7%B7%9A%E5%BD%A2%E4%BB%A3%E6%95%B0%29

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?