「絶望読書」頭木 弘樹・著

「絶望読書」頭木 弘樹・著 出版社・飛鳥新社 出版年・2016年5月    ー悲しいときには、悲しい曲を。絶望したときには、絶望読書を。ー   と帯にはあるのだが、絶望した時に本を読むという発想はなく、???だったのだが、絶望から立ち直るためには、読書(物語)はどれだけ役にたつかが、具体的に提示されている驚きとともに、「絶望読書」が 絶望から回復する手段として有効であることが理解できた。             著者の実体験にもとづいているので素直にうなづける。         そこまで絶望した経験のない身には、このような発想は出てこないことを知ったことも目から鱗だった。私にとって本を読むことは、息をすることと同じくらい自然で、本を読むことに特別な想いもなかったのだが、読書から広がるさまざまな出来事に、最近になってしみじみ実感している。本を読むことは、目に見える利益が得られることではないが(そういう人もいるのだろうけど)人生ー生きていくことーの奥深さを教えてくれる。       1冊の本から広がる世界は、読んだ人の状況、状態により、無数にあるのを知る。カフカの「変身」の読後感は、著者とはかなり異なるし、母の金子みすゞ好きは、ちょっと引くぐらいだったのだが、彼女の詩に母のこころは、どのような同感、共調があったのだろうかと改めて考えてた。絶望していなくても、この本を読むと「物語がもつ世界」が、読む人により無限に広がることが実感した。                          世界は今、戦争、地球温暖化、各地で頻発する自然災害、少子高齢化など、社会全体を覆う薄いけれどぬぐいがたい絶望状態で 無力さ、ふがいなさ、無常観に押しつぶされそうになる日々だが、「生きてる」ことはそういうこともあるので、この状態のままでいることをどうすごすか この本に沿ってみるのもいいよ。

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