【読書感想】橋爪大三郎著『死の講義――死んだらどうなるか、自分で決めなさい』
グーテンターク!皆さまこんにちは。フランクフルトのYokoです。読書の秋ということで今日は読書感想文をのせますね。
橋爪 大三郎著 『死の講義――死んだらどうなるか、自分で決めなさい』です。
タイトルに「死」という単語があることにギョッとされるかもしれませんが、著者は人が豊かに生きるためにと願われて書かれているのでとてもポジティブな本です。
なので以下私の感想を読んでいただけるととても嬉しいです。(それといわゆるスピリチュアルな本でもありません)
戦後日本は国内は平和で長寿社会となり、日常の死が遠くなりました。自宅で家族の最期を看取ることも葬儀を自宅で行うことも減り、さらに共同体のつながりが希薄化するなかでコミュニティで他者の死を身近に感じることも減っています。死が遠ざかった現在では、死を語ることが不吉であるかのように周到に避けられていますが、人は、いつか、死ぬ。これがまごうことなき事実です。
本書は死と向き合うことを通じて、今を豊かに生きることができるという観点でたくさんの宗教における死をめぐる考えを紹介しています。
橋爪さんは本書で宗教の役割をこのように述べておられました。
「生きるとは、何かを大事にすることである(価値)。そして、それを言葉で考え、言葉でわかることである(意味)。価値と意味は、一人ひとりの生き方である。学校では教わらない。理性からは導かれない。人びとに、価値や意味を伝えるのは、家族の役割。共同体の役割。そして、宗教の役割だ。」
この本は様々な世界の宗教における死の捉え方を体系的に解説しながら、あなたはどれを選びますか?と質問を投げかけています。
具体的にはキリスト教やユダヤ教、イスラム教などの一神教における死の考え方から、仏教、儒教、道教、それから日本の神道や日本の仏教各宗派の違いがわかりやすく網羅されています。
複雑に絡み合い、時系列が極めて長いこれら宗教の話をギュッと大胆にまとめて簡潔に比較しながら説明できる橋爪さんの知力と言語力のなせる技。
この本では宗教の一つを選択して考えてみるように勧められますが、それは宗教の優劣を決めることではないと読んでいてわかります。
私自身では何を選ぼうか、その選択はまだ出来なかったのですが幅広い選択肢のバリエーションをしていただきて世界が広がりました。またドイツにいて異文化コミュニケーションを日々する中の日常のあれこれが、ああこういう考えがあの人の根底にあったからああいう発言だったんだな、ですとか私が無自覚に日本人の考えで相手に話してイマイチ響かなかったのは私の前提が特殊でそこを説明しなかったからなんだなとパズルがつながったこともありました。
自分の死の捉え方、つまりどのように豊かに「生きるか」を考えるきっかけであると同時に他者の別の価値観を認める寛容につながることでもあるなあと感じられたのも本書を読んだ収穫です。
自分がどう生きるかに加えて、価値観の違う他者とどう一緒に生きてゆくかとの折り合いについても考えさせてくれる本なのでこれからも折に触れて読み返したい本です。
橋爪先生は宗教に関する本をたくさん出されているので遅まきながら、他の本にもチャレンジしたいと思います。
それでは
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!
Bis dann! Tschüss! ビスダン、チュース!(ではまた〜)😊
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