【こ9】「デジタルフォトフレーム」について
今日のコラムは、デジタルフォトフレームについてです。
先日、あるテレビ番組が終了し、スタッフさんが永年に渡ってMCを務められたタレントさんに、これをプレゼントしたという話題をラジオで聴きました。
ここで突然ですが「国語」の問題です。
この場合における『先日』は、「あるテレビ番組が終了」「ラジオで聴きました」のどちらを指すのでしょうか。どちらも正解に見えますが、詳しい方がいらっしゃれば教えてください。
話を元に戻しますが。
長寿番組が最終回を迎える際、番組に携わったスタッフさんは演者さんに「デジタルフォトフレーム」をプレゼントする事が多いそうです。
番組が始まった際のフレッシュな様子。
一番最初に登場したゲストとのトークの様子。
大物と呼ばれる人物がゲストに来た際の様子。
番組の初回から出演してきた演者が卒業した時の様子。
それに代わる新たな演者に、なぜかモザイクが入っている様子。
謎のモザイクが、ゲストにも入っている様子。
トークがメインの番組構成が、急にクイズ中心の番組に変わった様子。
それが大失敗して、再びトーク番組になった様子。
最初は派手だったセットが、年月が経つに連れショボくなっていく様子。
司会者の髪型が、一向に変わらない様子。
それでいて司会者の髪の生え際が、微妙にズレている様子。
番組のワンコーナーで「ヤラセ」が発覚した様子。
演者の涙の謝罪も虚しく、突然テレビ欄から番組名が消えた様子。
また、最近では結婚式のお祝いにも重宝されているそうです。
フレッシュな夫婦の思い出を詰めるのでしょう。
初々しい二人が、出会って間もない頃。
初めて手を繋いで、遊園地へデートした頃。
その遊園地が廃園して心霊スポットとなり、改めて二人で出掛けた頃。
月日が流れ、二人で初めて旅行に行った頃。
その夜のプレイで、新郎が苦悶の中にも快楽の表情を浮かべていた頃。
その際の新婦の手には、なぜか黒いムチが握られていた頃。
そのホテルも心霊スポットとなり、改めて二人で出掛けた頃。
何気ない一言で、二人がケンカ別れした頃。
ケンカ別れの寂しさから、新婦がマッチングアプリで男を探していた頃。
意気投合した男に会いに行ったら、なぜか新郎だった頃。
そこで改めて、二人の愛の深さを確かめあった頃。
その夜もまた新婦の激しいプレイで、新郎が悶絶していた頃。
法に抵触する行為により、新婦が灰色のジャージにサンダル姿で腰には縄を付けられ、手首にモザイクがかかった状態で白い車に乗せられた頃。
また、デジタルフォトフレームは「成人式」の贈答品にも最適だそうです。
我が子の成長の記録として最高のプレゼントです。
両親の手に抱かれ、スヤスヤと眠る自分。
初めてつかまり立ちをして、両親を喜ばせる自分。
幼稚園の入園式で、緊張した顔をしている自分。
小学校の運動会の徒競走で一等賞を取り、自慢げな顔をしている自分。
急に母が「新しいお父さん」を連れて来て、戸惑う自分。
中学校の入学式では黒髪だったのに、卒業式ではド金髪になった自分。
タバコの銘柄がマイセンからショッポとなり、赤マルに落ち着いた自分。
工業高校に入学し、少し変わったスタイルのオートバイに乗る自分。
金属バットを手に持って、隣町の工業高校との抗争に参加した自分。
何かしらの液体が入っているビニール袋を、至福の顔で吸っている自分。
警察のご厄介となり、号泣する母親とともに署から出て来る自分。
突然両親が蒸発したにも関わらず、パチンコ屋の開店の列に並ぶ自分。
素晴らしい思い出が数多く詰まった「デジタルフォトフレーム」。
それに写し出される画像には、様々な人間模様が垣間見える気がします。
ちなみに、イケ好かない新郎新婦の結婚披露宴の引出物として「無駄な幸せ画像が山ほど詰まったデジタルフォトフレーム」が入っていたとすれば。
私はその帰りに、披露宴会場の駐車場で自分の車のタイヤにそれを噛ませ、前後10往復ぐらいする事でしょう。
その狂気にも似た行為を見た列席者は次々と同調し、新郎新婦が式場を出る頃には駐車場が産業廃棄物の山と化しているのではないでしょうか。私は「新婦を2度泣かせた男」として、ついさっきまで幸せの絶頂だった二人の心に強く残ることでしょう。もうアイツとの縁は切ろうと。
最後になりますが。
仮に私の手元に、それが届けられた場合。
私はきっと「遺影として仏壇に飾れ」と遺言を残すことでしょう。
草木も眠る丑三つ時。漆黒の闇に包まれる仏間にうっすら光るデジタルフォトフレーム。それには、在りし日の私の姿が次々と写し出される。
その様子を見た子孫は「ご先祖様、トイレに行くまでの暗い廊下を優しく照らしてくれてありがとう」と思うか、そこで要件を終えるかのどちらかでしょう。
以上、コラムでした。