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小説家の労働環境改善/①なにはともあれ窓ですよ

こんにちは、小説家の朱野です。
のっけからなんですけど、毎日寒いです。小説なんか書けたもんじゃない。でも指は動かしておいたほうがいいので、前からやるやる言ってる「小説家の労働環境改善」の話を書こうと思う。

この一年、休んでいる間に、労働環境を改善しようといろいろやってきた。時系列で書こうと思っていたのだけど、小説でもそれをやって、さらにnoteでもそれをやったら心が死ぬので、書きたいと思った順で書くことにする。途中まで無料、途中から有料で読んでいただけます。

小説家の労働環境改善で、最初の話題がなぜ窓なのか。それは冒頭の繰り返しになるけど、寒いから。

希死念慮持ちの私は気温差に敏感だ。とくに気温がぐっと下がったときは気持ちが落ちやすい。それと同時に、作業効率も落ちることがわかってきた。これは私だけではなく、わりとみんなそうらしい。

この記事によれば、室温が20度のときよりも25度のときのほうが、圧倒的に作業効率が上がるそうだ。「タイピングミスが44%減少、タイプする文字量が150%増加」とまである。そういえば、最近、Twitterで誤字が多い。誤字脱字をチェックしたつもりが、投稿してからみると誤字っているのだ。「加齢だな」と思っていたのだが、待てよ、体が冷えているからでは?

そもそも労働環境改善を改善しようと思ったのは、半年くらい前。2022年の夏ごろだ。突然小説が書けなくなり、仕事を休んだ。それから半年くらいたっていたころだった。メンタルだけではなく、ハードの部分も改善しないとまずいのでは、と思っていたとき、この本に出会った。

著者のmochikoAsTechさんは、コロナ禍でリモートワークになったのを機に、自宅を本格的なオフィスにしていく。その様子がこの本には綴られている。迷いなく投資していく様子が気持ちよい。私はむさぼるように読んだ。

勤労者の一人である私の一日の大半を、仕事をしている時間が占めている。リモートワークが普及して、その仕事場が自宅になった人も多いだろう。私は最初から自宅だ。なのに、投資をしようとしてこなかったのはなぜなのか。それはヘミングウェイと村上春樹のせいだ。ヘミングウェイは冷蔵庫の上で小説を書いたと言われる。村上春樹も新人のころはダイニングテーブルで書いていたそうだ。だから、「どんな場所でも名作は書ける」「むしろ過酷な環境こそ良い作品が生まれる」という、わけのわからないスパルタ精神が私にはあった。(村上春樹はどう考えても今はダイニングテーブルで書いてはいないと思うのだが……)

しかし、mochikoAsTechさんは、そんな私のスパルタ精神を嘲笑うかのように(別にそんな風には書いてはいないのだが)、どんどこ自宅オフィスを快適にしていく。読んでいるうちに「私は間違ってたのかな」と思えてきた。そりゃそうだ。「過酷な環境でこそ、良い仕事ができる!」と叫ぶスパルタ経営者より、「オフィスに投資して、改善してみたけど、どうかな?」と聞いてくれる経営者の方がいいに決まってる。私は私にとってあまりいい雇用主ではなかったのかもしれない。

mochikoAsTechさんが最初に投資するのは自宅オフィスの窓だ。

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