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愛とタバコをくゆらせて

愛がないと知ったのは
まさに行為の最中で
私は何も言えなかった

愛がないのはわかるのだけど
愛がある状態が分からないから
どこを指摘したらいいのかわからない

彼から出たものはとても少なくて
「こんなことにならないように、しておいたんだ」
と、タバコと一緒に彼がいう。

今なら
その惨めで品もないくせに
プライドに満ちた
いいわけの理由がよく分かる。

タバコは嫌いじゃなかった。
私も時々吸うと、彼はとっても
嫌がった。
甘く優しい煙の味
それはガムよりも
優しい
それなのに

あの人のタバコの匂い嫌いじゃなかった
ベランダで吸うあの人の
匂いと風が
好きだった
いつまでも背中を抱きしめていた。
彼の手はいつも少し
ひんやりしている

最後のキスは思い出せない
ずっとずっと前のことだ
風が吹くと
どこからかタバコの匂いがして
私は眉間に皺を寄せた。

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