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それは寒さとの戦い前編

少し前から、むすーこと一緒に療育というものに通っている。
きっかけは赤毛のアン並みの

かんしゃく

で、ぶっちぎれると、石板をお隣さんに打ちつけるほどのパワフルな子になっちゃうかも知れないと思うほどの強さで、親が結構疲れ切っていた事である。
これは毎日外に連れ出し体力を消耗し、キレる体力も根こそぎ奪おうとしたがそんな事は無理で、さらにこの子大変じゃない?という
周りからの目線が

温かくて同情的。

だったこと。
あれ、子育てってこんな温かいシステムだっけ?とぼんやり生暖かくなった血走った魚の目で、生きていた、という2つの理由である。
まあ血走ってるのは一年のうちの半分はアレルギー性の結膜炎だからなんだけど、それにしたってクタクタしているお母さんの目が血走っていたら、いかにも鮮度わるそうでヤバい。
とはいえその鮮度悪い血走った目で、ママならぬ日々を結構楽しんでいたりしていた。
まあ子どもってそんなもんだしねぇ、なんて思いながら。

そして疑惑の満塁に放たれた決定打は、幼稚園入園の面接である。
園長先生の最初の一言は

「この子、じっとしている時ある?」

だった。

むすーこが入園予定の園は、お姉ちゃんが通っているので園の先生達もむすーこの暴れっぷりは確認済み。
そんなわけで先生からもお姉ちゃんのお友達からもむすーこはアイドルで、毎日愛想を振り撒きまくり、勝手気ままに、むしろ勝手知ったる庭として、日々園内を走り回っているのである。
なので、なんの問題もなく、この子は忙しないタイプの子どもなのね😊とすんなりことが進むと思っていた。

しかしチョイと、いやだいぶ、面接時の様子がちがう。
この鈍感で、濁った目をした私でもさすがに気がついた。第一園長先生の面接での初めての質問が
「じっとしている時、ある?」っておかしいし、その上

面接時の息子の態度が、娘の時と全く違う現実がそこに在る。

そもそも現在はコロナ禍であり、面接も時間をずらした完全個別対応で、もはやアットホームな雰囲気。しかも息子は園に慣れきっているため、なんの緊張感もなく入室。
親は緊張しまくりで、コロナ禍故頼みの綱の夫もおらず、1人でお役所の人と対面。
極度の緊張を抑えるため、

事前に市役所にて全書類チェック済み

であり(いくら緊張するからと言って全部書いて役所に直接チェックに行く奴ってあんまりいないと思うの)なんの問題もなくパスできるとはいえ、緊張するもんは、する。

しかも

落ちたらどうします?

とか質問してくるので、流石に日本死ねとは言えず、役所の書類に書かれた最終募集みたいな条件を確認しながら、

この条件で再申し込みします。

と断言して、お役所の人面接は終了した。

そしてこの緊張感緊迫感あふれるやりとりの中、むすーこは果てしなく自由だった。
なんてったって、まずお役所の人が書類見ている間に、私と私の座る椅子の背もたれの間で、

ホップステップジャンプ。

落ちるよ、とは言いつつ奴はそんなヘマはしないしないタイプなので、私は安心して緊張し、地蔵のように固まっていた。

極め付けは、面接終了間際に

床に大の字に寝た事だ。

アレ?これ面接だし、それなりに張り詰めた空気なんだけど大丈夫か?と思ったが、お役所の人も他の保育士もみな平和に息子を見守っている。
だから大丈夫と思ってた。
ちょっと自由すぎない?と思ったけれど。

で晴れて?園長先生と面接なのだが、息子が入室するや否や

ふかふか豪華イスにダイブ。

さすがに脳内に警告音が鳴り響く。
コイツかなりヤバい奴なんじゃないかって。

そして面談室にあるものをとにかく触りまくる息子。そろ暴れっぷりというか縦横無尽というか、自由っぷりは、いつもみてる親としても驚きだった。こんなに自由に見える息子だが実は案外ビビりなので、初めての場所では固まりがちなのだ。
初めてのレストラン、はじめての病院、はじめての花屋などでは、母親の腕の肉の柔らかいところをフニフニしながらじっと耐えている。

にも関わらず、良くも悪くも全く緊張しなかったのが仇となり、とんでもない面接となったわけだ。
そして園長先生は言った。
「この子、もし発達の事で何かあったらお母さんにお声掛けしてもよいかしら」
私は

全力でヘッドバンキング

しながら
「はい、よろしくお願いします」
と言った。
もうそうするしかなかった。
というか、息子の成長を考えてもそうすべきだし、おそらく園長先生の長年の勘は正しい。
私はそう確信しながら、とりあえず過去に保健センターやら小児科の先生に相談した事を伝えた。
結果どちらも問題なしとか、様子見とか言われてることを伝えると

「お母さんが不安だったり、心配じゃなければそれでいいのよ」

そう園長先生は、いうのだった。
そうですよね。アハハハ。
全然心配してなかったんでアハハハ。
などとお互い笑っていたが、内心私は

もう笑い事じゃないな

と思った。
なので、なんとか大暴れする息子をコントロール(というのは真っ赤な嘘で、周りの子どもに慣れてる先生にうまく誘導してもらいながら、靴を履いたり上着を着せたりして、速やかに退室する)しながら園を後にし、その足で役所に向かった。
向かうべきは子ども課と福祉課。
療育の説明を受けるため、そのまま役所に直行したのである。


続く。

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