夏真っ盛りという大げさな言葉に比較した時の切れるような真冬の冷たさ
今年は10月頭くらいからダウンを着ていた。
たまに寒い日があったのと、衣替えが面倒臭かったからだ。
色々な人に突っ込まれた。久しぶりに会った人にも、近況を聞かれる前に「暑くないの?」と尋ねられた。その度に「暑くないです」と答えたが、実際は暑い日もあった。10月の気候は難しい。
11月末。
少し混み合う午前8時前の丸ノ内線、方南町行き。普段乗らない時間の電車の学生の多さに気がつく。
目の前に一人の女子高生が立っていた。
少し眉間の幅が広い目鼻立ちのはっきりした可愛いらしい少女だった。紺色のチェスターコートから伸びるガニ股なハイソックスの先に、ローファーが覗いた。最後の無垢性を孕んだある種の様式美があった。
会社にローファーで来る先輩がいる。
ローファーと九分丈の裾の間に、くるぶしがいつも見えている。靴擦れを起こしそうな着こなしに、内心センスがないなと思う。それでも、上司からの信頼は厚い。
電車を降り、地下鉄を上がり、半日ぶりに外へ出た。どんよりとした空から小雨が落ちる。寒かった。今日もダウンを着ていて良かった。
真冬も近い気がする。
(文・もいすと)
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