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なんだろう展+新収蔵品展@平塚市美術館

本日は平塚市美術館に前々から気になっていたなんだろう展を観に行ってきました!平塚市美術館は神奈川県の平塚駅から徒歩で15分ちょっと。

行くのは初めてだったんだけれど、やはりマイナーなのか、土曜日なのに人が少なくて、落ち着いてじっくり腰を据えて展示を観れたよ!美術館自体の内装も綺麗だし、静かだし、なんという上質空間...!という感じでした。

エントランスには三沢厚彦さんによる木彫のユニコーン2体がおり、特集展を観る前にまず見入ってしまった。彫りの静かながら力強い肌感が美しカッコイイ。そしてじっと見てるとなんとも言えないアホ顔にも見えてくるのがまたいい...!

そして、驚きなのが、特集展の料金。そもそもが破格の200円で、携帯で美術館HPのインターネット割引見せたら団体料金の140円になりました。もはやユニコーンだけでもう軽く元とっちゃってる気がするんだけど大丈夫かな...!?ちなみに過去に館内に掲示してた各地の展覧会ポスターも1人3枚までもらっていいとのことで、ご自由にというコーナーに置いてありました。メディアアート展とロートレック展のポスターがあったので、お言葉に甘えてもらってきちゃいました。平塚市美術館、もう大好きになっちゃったよ!

肝心のなんだろう展は、展示の仕方も面白く、基本的には作品の他には一切何もないの。作家名も作品の題名も解説といったキャプションもありません。入場の際に観客にはリーフレットが手渡され、どうしても気になるものがあったらそのリーフレットをめくって作品リストを眺めてもOK、という仕掛けになっていますが、基本的にはその名の通り、「なんだろう?」を何の先入観にも捉われず、各々が考え感じてみて!という遊び心のある特集展です。コンセプト通り心のまま考え、感じてみよう!と思っても、最初のうちはこれが意外と難しくって。いつも美術展を見ている時に、題名や制作された時代や国、自分がそれらを如何に頼りにして作品鑑賞を膨らませていたかに気づかされました。見ないようにしようと思ってもついつい、気になってめくりたくなってしまうリーフレット!

作品を近くで見てから、数歩離れてまた見て、「この作品はなんだろう?」「私だったらどんなタイトルをつけるだろう?」と考えてから、リーフレットで本当のタイトルの答え合わせをするという鑑賞をしてみました。お魚が透明な車の水槽に入っていき、その車の近くに小さな男の人がなんとも言えない顔で立っている不思議な絵があり、タイトルを考えて、うーん難しい!って答えあわせをしたら、絵の本当のタイトルも「無題」でずっこけたり。ちなみに、こちらの作家は石田徹也さん。石田さんの作品は他にも幾つか展示されていて、現代社会のリアルを皮肉的かつポップに表現したような作品に強く心惹かれた。若くして事故で亡くなられている作家さんだけれど、未だに日本だけでなく世界でも人気が高いそうで納得。また、世界の文字を体に散りばめたうさぎが食物の周りを飛び跳ねているような絵があり、世界の食物連鎖的な作品かなと思いきや、「盲目うさぎは舌で世界を知覚する」というタイトルで、こう来たかと唸らされたり。こちらの作家は藤山貴司さん。タイトル含めての美術作品だなぁ、考え付かないなぁと感服。

ちなみにこちら、今回の特集展のポスター(左)にも使用されているのは湯原和夫さんの作品でした。絞った練乳やクリームのようにも見えるし、軟体動物の触手のようにも見える、直方体のモニャモニャしたシリコンの物体でまさしく「なんだろう?」である。四方からぐるぐる見回して考えた末に、このモニャモニャはイソギンチャクのように常に変容している何かに見えてきた。ひとつひとつのやわらか(そうにみえる)な突起の出っ張りや垂れ方は決して今までもこれからも同じにはならないもの。そんな一秒一瞬を、時間を止めて固めたものに見えてきたの。ずっと同じであることはなくて、形は思っていたよりもいびつで、でも、だからこそ尊くて儚くて、美しいもの。なんだかまるで人が人を想う気持ちみたいだなと思って、私は「可視化した愛」という渾身のタイトルをつけてみたけれど、作品タイトルは「作品No.2-05」だった。いや、これ本当に何だったのだろう、わかりません!笑

捨てられたドアに彩色した山本直彰さんの作品も素晴らしかった!ドアが青で塗られたり、金箔が貼られたりしていて、見ているとこのドアはどこへつながっているのだろう?ってワクワクさせてくれる。ドア自体も普段はしっかり見ないけれど、それぞれ形状が異なっていて面白いんだなという当たり前の事実に気付かされる。それと、山本さんが彩色するドアはドアノブが外されているの。前述の通り、基本キャプションのない展示なのだけれど、特別に作家が来館者への質問に回答しているコーナーも一部あり、そこで来館者の「どうしてドアノブが外されているのですか?」という質問に対して、「ドアノブがないからといってこの扉は開かないという訳ではない、だから立ち止まるのではなく勇気を出して前へ進んで欲しいというメッセージを込めている」というようなことを山本さんがおっしゃられていたのも胸にジーンときた。人生は進んでいかなければならない。例え戻るという選択をしたとしてもそれは歩みを止めることにはならない。勇気を出して扉を開けていかなければならないなぁと思ったよ。小さな選択の連続である人生、その色々な場面でそれぞれが頑張って開いていく扉はもしかしたら山本さんの作品みたいな素敵なドアなのかもしれない。今回の展示、写真撮影不可なのでここで紹介できないのですが、多くの方に見て欲しいのでもし平塚くんだりまで来る機会があれば、是非平塚市美術館に足を運んでみてください…!

併せて、新収蔵品展も行われていて、こちらも見応えあり。ドラえもん展にも参加されていた人気作家・福田美蘭さんの作品も、新しく6点も収蔵されるようになって、平塚市美術館、本当にイケてます!特に「絵画の洗浄」という絵がユーモアが効いていて非常に良かった。ルーベンスの代表作品「三美神」という絵を洗浄(油彩画表面の変色部分を除去すること)したら、下からディズニーの「不思議な国のアリス」の絵が出てきたというもの。勿論、ディズニーのほうがルーベンスより後の時代だから本当は絶対ありえないんだけれど。クスっとさせてくれるこういう作品好きだなぁ。ルーベンスの絵とディズニーの絵柄がミックスされた画面を見るの、視覚的にも楽しい!美蘭さんは本当にこういうの巧い!

長谷川さちさんの彫刻展も行われていて、こちらも思わず触りたくなる、触覚を刺激されるような作品たちで、とても良かった。

階段にもひょっこりうさぎさん。平塚市美術館、満足度高すぎでした!

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