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ダメな大人が飲むとき。

人の目が気になる。

よく思われたい。よく働く人だと思われたいし、優しい人だと思われたい。いい人だと。できれば、きちんとしていると思われたい。そんなに、きちんとしていないくせに。

お寿司食べる時の、醤油入れる小皿くらいしか器がないけれど、そんな私がとてつもなく、好きな空間がある。


年に2度、春と秋の始まりに、フェスに行く。もちろん、音楽も好きだ。ちゃんと、アーティストを見て、ライブでよくやる曲を調べ、プレイリストを作り、3ヶ月前から予習する、真面目な一面もある。

けれども、私の1番の目的は、あの空間で飲む、お酒のためだ。

大人って、ストレスが多い。なんか、30過ぎたら、生きてるだけで、ちょっと疲れる。めんどくさいことは、多いし、人生ってそう、いいもんじゃない。

きっと、あの空間にいる、多くの大人が、大小はあれど、同じような気持ちを抱えているんだと思う。

けれど、あの1日を楽しみに、日々を送っていく。運動会を楽しみにする子どもみたいに、天気予報で一喜一憂したりする。

そして、当日、待ちに待った当日、お腹の中に、モヤモヤを抱えた大人たちが集まって、昼間っから、空の下、お酒を飲んだりして、地べたに座り込んだりして、人の目も気にせず、笑ったりする。

同じものを見て、同じものを聞いて、笑ったり泣いたりする。歌ったり、踊ったりする。大人なのに。

そんな大人たちに混ざって、私も飲んで食べて、笑ったり泣いたりしているうちに、人生ってなかなかいいもんだな、大人っていいな、って思ったりする。


帰ってくると、荷物を片付けたり、死ぬほど混んでいた仮設トイレとか、考えてみれば、結構高い、お酒とご飯を思い出して、私の小さな器が、モヤモヤで満タンになったりするけれど、年が明け、また、チケットの申し込みが始まると、あの空間が思い出されて、決して安くはない金額を払ってしまっている。


きっと、あの空間でお酒を飲んで、笑うことで、大人だって、ちょっとくらいダメでもいいじゃない!って肯定されてるような、気になるんだと思う。


そんな、フェスも今年は、コロナでダメになってしまった。私の小さな器からは、モヤモヤが溢れ出してる。きっと、いつかのフェスで飲む一杯が、人生で最高の一杯になると思う。

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