悲しみを悲しむ

息子が2歳になった頃、そろそろ次の子どもが欲しいと思った。それから息子は3歳になり4歳になった。次の1月で5歳になるが、彼はひとりっ子のまま。周りの友達にはだいたいどこかのタイミングで弟か妹が生まれて、気が付けば自分にだけ誰もいない。


優しい息子は、年下の子どもが大好きでよく世話をやく。寂しがりやでもあるので、自分をてとてとと追ってくるその存在が嬉しいようだ。頭が良い子なので、自分にだけどうしていないのだろうと感じている様子もある。なんでも「なぜなぜ」と問うてくる子なのに、赤ちゃんについては触れないのもまた、なにかを感じてなのだろうか。


「もうすでに1人いるのだから」

「病気や障がいで絶対に産めないというわけではないのだから」

「子どもが欲しいと一緒に待ち望める相手がいるだけ幸せなんだから」


この悲しみをのみ込むために、あらゆる言い分を並べるのにも、もう疲れた。


毎月毎月小さな絶望が私の心をそっと訪れ、小さな石を積み上げていく。それは3年かけてとんでもない高さに積み上がり、奇跡的なバランスでそびえ立っている。ほんの少しの風でも吹けば、今にも崩れそうだ。


この積み重なった石の塔を崩してしまわなければ。でないとこのバランスを保つことで精一杯で、私はもうどこへも行けなくなる。


今はただ泣きたい。ただただこの悲しみを、悲しみたい。

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