You Don't Have to Be Alone to Be Lonesome
焚き火がゴウゴウと燃えている。夏にはリバーサイドバーとして機能していたスペースがすっかりと冬仕様に変わっている。燃える炎を囲んだ人にゆらめくオレンジ色のフィルターがかかっていた。なぜだかぼんやりと幸せの象徴に感じて、遠くから眺めていた。でもあの場所に自分がいるイメージはなかった。なんでこの季節は寂しくなるんだろうか。暗い天気のせいか、やけに明るい街のせいか。孤独になるために1人になる必要はないけど。1人でいても、誰かといても寂しくなる。孤独がない人間はつまらないと強がっているけど、そこに自分は身を置きたがらないんだから、自然と家に帰らなくなっていた。
東に向かうバスはガタガタと揺れる。誰かが待っているわけでもない1日に、たまに行くパブのクリスマスジャズイベントがあった。着いても人の喧騒で何も聴こえず帰宅を考える。気を取り直して「せっかくここまで来たから一杯飲んで帰ろう」とパイントを頼んでも、外のテーブルも全て埋まっていてなんだか居場所がない。賑やかな雰囲気の中で、ここにいても良いのか味の煙草を吸っている。吸った煙草の煙なのか、寒さにかじかむ白い息なのかわからなくなっていた。大きく宣伝されてたムルドワインが無かったし、代わりに選んだギネスも無かった。仕方なく頼んだ冷たいビールには後悔、あーあ、これなら頼まなくてもよかったな。無くならないビールがすべてを表しているように感じて嫌になった。本当に選びたかったものはいつも選べない。選んでもいつか無くなってしまう。仲良くしていたかった人、終わって欲しくなかったパーティー、壊してしまった昔のおもちゃ。全てそのままでは保っていられない。流れゆく何かを握っていようとしても、どれもが指の隙間から落ちるから、結局後悔だけを残して自分の手しかいつも残らない。
2023年は久々に人生の最高を更新したような1年間だったから、今の生活の終わりが見えてきて怖いのかもしれない。気を許せる友人が沢山できて、何度も音楽に感動して、「どうしたら正解だったのか」がマッハで吹き荒れる嵐をようやく抜け出した1年間。誰もやってこないなら自分で会いに行こうとする人間になりたかったし、多少は近づいた気がする。帰り道、人づてに落ち込んでいると聞いた友人に会いに行った。会いにきたぞと冗談めかしたが、会いたかったのは僕かもしれない。まだきっと大丈夫、どうにでもなるよ。酔いが少し回って楽観的になるから、ようやく飲んで良かったなと思った。今の後悔も先ではきっと正解になるはず。今年はそんな年だったもんね。忘れるのも忘れないのもとても簡単。でも目の前には今だけのロンドンの冬がある。
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