見出し画像

書物巡礼


『夕方らせん』

私はこれを手に入れた当時中学2年生だった。
音楽をやりたいなら本をたくさん読むと良いよ、と人に言われたその日に本屋さんに寄り、偶然見つけた1冊。
図らずもそれが今も変わらぬお気に入りの1冊になった。
なぜこんなにずっと読み続けているかなと考えたのだけど。
なんだか、
この物語それぞれの登場人物たちと私の人間性、馬が合うみたいなのだ。読んでいて妙に居心地が良い。
みんなそれぞれにどうかしてるのだ。
愛のかたちも育てかたも自分との向き合いかたも、ちょっとどうかしてる。
でも、その人のなかではちゃんと1本筋が通っているから本人はそこに疑問も戸惑いもない。
その超マイペースなロマンチズムがどうやら私はすきらしい。多分私もどうかしてる。

そんなどうかしてる物語の中のひとつ
「若草のつむじ」
に好きな一文がある。
"流れのなかに立ち止まって「あの気持ちあの気持ち」とつぶやくと、まわりからだんだん遠くまで、ゆっくりと波が静まっていき、間違わない方向の石が輝いて見えた。
困ったときは遠くを見よう。近くばかりを見ていると、迷うことがあるから。、、、、" 何かに一生懸命な人や真摯な人は美しくてすきだなと思うからわたしもそうなりたくてがんばってみる。
だけど、心はすぐ迷ったりふらついたり怖がったりするもんだから困ったもので。
あれ、私ってば何を大事にしたいのだっけ?
ってか私という人の必然性ってあるのかしら?
と何か起こるたびにぐらんぐらんになる。
そんなときはちょっとボーッとしながらあの一文を思い返して唱えてみる。
なんとなく、原っぱみたいな蒼くだだっ広いところにひとりでいるじぶんをイメージしたりして。
わたしの真ん中に居るわたしに会いに行く。
深呼吸しながらきもちの整理整頓をしてみるのだ。

どうかしてる物語で生きるどうかしる人たちが
酸素不足になりがちなわたしのきもちにおいしい空気を送り込んでくれる。
14歳のあのときから、今も。多分これからも。

#書物巡礼
#夕方らせん
#銀色夏生
#本

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?