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ながいはなし

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#短編小説

〈小説〉ああ、ロミオ

〈小説〉ああ、ロミオ

「わたしは死んだことになってるんだよ」
おにぎりを陳列棚に全部おさめて振り返ると、悲しい目で美濃くんがわたしを見ていた。
「だからさ」
同情してもらおうとか慰めてほしいとかそんな気持ちはない。
毎日ストーカーから守るために、義理で送ってくれるようになった美濃くんに申し訳なくてわたしは言う。
「わたしに何かあっても、親はなんとも思わないよ」
空になった運搬用の青いコンテナを持ち上げると、美濃くんが無

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〈小説〉鳥はどこへいった

〈小説〉鳥はどこへいった

「鳥がいる!」
母が玄関で叫んだ。
「なになになに」
面倒くさいと思いながら僕は玄関に行く。
「鳥がいるのよ」
「鳥ぐらいいるだろうよ」
「青いのよ」
「青?」
「綺麗な青なの!ちょっと来て」
僕は母と玄関を出て団地の階段を降りた。
団地内の小さな公園の木に、青い鳥が止まっている。
「飼われてたんじゃないかしら」
「セキセイインコじゃない?」
「そうなの!?」
「うん、多分。ちょっと待ってて」

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