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かじか蛙の鳴く頃に~水瓶座のきみの恋するpetit story~

きみの星座別 恋するpetit story

【 かじか蛙の鳴く頃に 】

 この町に住む楽しみの一つに、「川のすぐそばにあるお風呂に行くこと」があります。生まれてこの方、ずっと私はそこに通っていました。街のスーパー銭湯のように広いものでも、たくさんの湯船があるわけでもありません。内湯が一つ、露天が一つのこじんまりしたお風呂なのですが、その静けさが、私には心地よかったのです。
 梅雨に入る頃に、露天風呂に入っていますと、たまに蛍が遊びにやって来ます。
かじか蛙の高く鳴く声が、心地よく響き、日々の疲れを癒し、そよめく風に乗って来る花や土の香りが、生きている感覚を取り戻してくれます。
そんなお風呂のある宿に、貴方をお誘いする日が来ました。自宅も近い宿に貴方と一緒に泊まるのですから、やはり照れくさくて……。
そんなわけで、私は、言い忘れてはいけないと思い貴方に手紙を書くことにしました。
「この町で、この宿に泊まるということは、家族に紹介したのも同じこと」と。
 少し強気に出たことが、今では弱気です。返事を待つ私の耳には、かじか蛙の声が優しく響いております。

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