シーソーシークワーサー Ⅱ【67 カゾクゴッコの緩衝材 】
【シーソーシークワサーⅠのあらすじ】
母を亡くし、その孤独感から、全てを捨てて沖縄から出た凡人(ボンド)こと、元のホストの春未(はるみ)。
一番に連絡をとったのは、東京の出版社に勤める絢だった。
絢に会うまでの道のり、人々との出会いで得たことは何だったのだろう。島に帰った凡人は、母亡き後の、半年間時が止まっていた空間に佇みながら、生い立ちを振り返っていた。
生前の凡人の母、那月は凡人を守って生き抜くために、様々な選択をする。
沖縄から遠く離れた本土の片田舎で育った凡人の母、那月。母の重圧に耐えかね、家を出た。家出少女を何も聞かずに受け入れたMasaとその妻、順子。Masaは那月に3ヶ月で売り上げを3倍にすることを条件に、次の日から衣食住の提供と引き換えに那月を自分の古着屋で働かせる。
その店に決まって現れる女とMasaの関係に気づいた那月だったが……
Ⅱ【67 カゾクゴッコの緩衝材 】
秋の匂いがした。運動会の前日もこんな風が吹いていた気がする。隣の手作り弁当を横目に、スーパーで買ってきた弁当をひろげて、赤いウインナーと、カタチばかりにご飯の真ん中に置かれていた赤い梅のことをよく覚えている。
味わうには程遠いお弁当を美味しそうに食べることができる。10歳頃に身につけた癖が、技となり、今に生きている。
まだ18年の那月の人生。それでも18年目にしてやっと、自分の意思通りにことが運んでいる。飲み込むのもやっとだったボリュームの朝食は、今日で終わりだ。
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