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【シーソーシークワサー 29 フラペチーノに冬の風】

【シーソーシークワサー 29フラペチーノに冬の風】

 17時はこんなに暗いものか。定時に仕事を終えても損をしているような気がした。今日は風の音がよく聞こえる。乾いた空気の中、ビルの合間を吹き抜ける時に音が出るのか、擦れているのが冬の音だ。


 会社最寄りのスターバックスでは、気分が切り替わらない。もう1ブロック歩いてドトールにするか、2ブロック先のタリーズにするかと絢は歩き続けた。久しぶりに得た僅かな自由を、歩いている間にどう有意義に過ごそうかと考えても、1ミリも思い浮かばなかった。残業がデフォルトの日々にいると、定時終業が早退か半休みたいに感じる。このところずっと忙しかったし、こうして働くことに何も違和感を覚えてこなかった。1ブロック分の間に、思い出したことと言えば、凡人のことくらいだった。ドトールを横目に通りすぎ、寄り道先をさらに1ブロック先のタリーズに決めたところで、アップデート出来ずに、ずっと開いてこなかったラインを遂にこじ開けた。
何件か来ていたメッセージの中には、もうとうに過ぎてしまったライブや、飲み会の誘い、彼氏との惚気話に旦那の愚痴、色々あったが、もう全てが済んだことで、重要性のないものばかりだった。

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