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魚心あれ、水心あれ~魚座のきみの恋するpetit story~

きみの星座別 恋するpetit story

【 魚心あれ、水心あれ 】

「何をしたいかなんて考えてないから、楽で、幸せなんだよ」
「あなたには夢や目標は無いの?」と、彼女がしつこく聞くもんだから、あっさりとそう返すと、彼女は少しの間、ぽかーんとした顔をして、次第に何も言わなくなり、遂には、帰ってしまった。
 夏の終わりの日、鮎の網入れの日だった。鮎を焼く前に、彼女は帰ってしまった。
僕としては、何をしていても楽しいし、誘われたら誘われるままに楽しむし、体調が悪ければ連絡を入れて断るし、昇格ですが、部署移動ですと言われれば甘んじて受けていた。そう言えば、彼女と付き合い始めた日もそうだったっけ。今もそうだ。彼女をそのまま帰らせている。
 網を引いたからといって、毎回、鮎が掛かるという訳ではない。それでも、朝から晩まで、この作業を繰り返す。僕の夏の終わりはこうして過ごす。僕は、この日だけは、いつも譲らなかった。
 追いかけたほうが良かったかなと思い始めた頃、彼女が帰って来た。
「やっぱり、鮎、食べてから帰る」
いつもこんな感じだ。たぶん、これからも。

 だけど今度は、きっと追いかける。

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