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遅刻常習犯だった若手社員時代のわたしを変えてくれた先輩の言葉

「(その会社では一番の若手の)○○さんの遅刻が酷くてね。何度も注意してて、本人も反省しているようだけど改善されなくて。どうしたもんかね…」
先日ある方が、そんな不満を漏らした。

詳しい事情はこちらも把握しきれないので、その時は曖昧な返事しかできなかったのだけど。
かつて、自分自身も遅刻の常習犯だった、甘ったれた新人社会人当時を思い出した。

・・・・・・・

社会人1社目の会社。
学生気分も抜けきっていないし、エネルギーも有り余っていた当時。
会社が終わったら、その足で、仲の良い友人たちと集まっては、夕食を食べたり、娯楽を満喫したり…毎日がただ楽して。
そのまま朝まで遊びまくって、日の出と共に帰宅をし、そのまま仮眠をして出社をする、なんてこともザラだった。

それでも会社では眠くならず仕事は出来たし、職場の人たちは良い人ばかりで最高に居心地の良い環境だった。
だけども、時折、どうしても朝起きられずに、5分、10分程度の遅刻をしてしまうことがあった。
その職場では、毎朝部門の朝礼が行われていたので、遅刻をしてしまった時には、ズラっと立ち並ぶ先輩上司の中に入っていくのは、どうやったって目立ってしまったし、バツが悪い思いもした。

でも、舐めまくりだったわたしは、その後も相変わらずやらかす事があった。


ある日、見かねた男性の先輩が、その日も遅刻をしてきたわたしに声をかけてきた。
「ちょといいかな」
そう言って、奥の会議室へわたしを連れていくと。

「最近は、遅刻もなくなったし、良かったね、って。Sさん(当時のわたしの指導員)とも喜んでいたんだよ。なのに、今日の遅刻。…本当に、すごく残念だよ。もう大丈夫だね、って期待してたのに。」

申し訳ないです…という思いで、ヘコヘコ俯きながら、その言葉を聞いていた。ふと顔を上げると、とても悲しそうな、怒りを押し殺しているような、何とも言えない複雑な表情の先輩が見えて。
ますます身を縮こまらせて、「すみません。気をつけます。」と、蚊の鳴く様な声を絞り出し、頭を下げて、反省の意思表示をしていた。

先輩は、口調こそ穏やかだったものの、今後、絶対やめてほしい。社員の見本となるべきだ。人事とはそういう存在なのだ。
と、切々と説いてくれた。

全くもってその通りと思ったし、現に、その時は、大いに猛省した。
………でも。
本当に本当〜に舐めまくり&スーパー激甘野郎だったわたしは、その後もたびたびやらかしていた。


再び遅刻をしたある日。
前述とは別の、隣の席だった男性の先輩が、何気なくこんな話をし出した。


「俺さぁ。人事って辛ぇよなぁ、って思うことも色々あるんだよね。
夜は、他の部署の人の相談や愚痴に付き合うこともあれば、飲み会に駆り出されることもあって。結局朝になることもしょっちゅうで。
でもって、相手の人は、翌日フレックスとかでゆっくり出社してたりするわけよ。
でもね。
どんなことがあっても、絶対に翌朝は定時に出社しよう、って決めてるんだ。
人事に配属された時に、それは自分のルールにしよう、って決めたの。」

先輩は、ゆっくりと穏やかな顔でわたしを見ながら話を終えた後、そのままPCに向かって仕事を始めた。


何一つ責めるでもなく。
「残念だ」とか「期待してたのに」と、矢印をこちらに向けることもなく。
ただ、先輩のマイルールを話してくれただけなのに。

わたしは、この時の先輩の言葉や気持ち、プライド…
それらが、ズドーーーーンと刺さった。

そして、その先輩のスタンスを心から尊敬できたし、カッコイイと思えた。
いつも色々な部署の人が、何かあるたびに先輩に相談しにきたり、連れ回したくなるのって、そういう先輩への「信頼」があってこそなのだなぁ、と。

プロ意識って、そういう事なんだな。
と、一気に目が覚めた。

それから、遅刻がピタッと止んだ。

・・・・・・・

相手の行動や意識を変えることって難しいことだ。
変えられるのは自分と未来だ、ともよく言われる。
だけども、それでも相手に響く言葉や、行動があることも事実だ。
それは、相手を変えようとする意識を手放して、
まずは相手の存在を認め、受け入れていることを示した上で、
相手が受け取れる球を届けてあげることなんじゃないかと思う。
そして、その時も、意思決定をするのは、あくまで相手次第だ、と信じてみることなんだろうな。

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