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9月の少年

近所に、メインストリートから一本外れに小川が流れてまして。
その小川を挟んだ小道を散歩したり、のんびりとバイクを徐行させながら走らせることが好きで。
今日も、用事があり、バイクでその道を通っていると、目の前から、虫籠を抱えた可愛らしい少年がこちらの方向に歩いてきました。
小学校2,3年生くらいでしょうか。

すると、背中だか、ランドセルだかに掛けていた上着が、ハラリと落ちてしまいました。
ですが、虫籠に全集中している少年は気づいてません。

バイクを止めて、
「少年!お洋服、落ちたよ!」
そう呼びかけても、こちらの声には一切気づかず、相変わらず虫籠の中を食い入るように見つめています。

やがてお互いの距離が近づいたところで、再度少年の目と耳に刺激が伝わるように、指をパチンパチンと鳴らすと、ハッとしてこちらを見上げ、気づいてくれました。

「お洋服、ほら、あそこに落ちちゃったよ」
そう言うと、ペコリと頭を下げて、走って取りに行き、またこちらに向かって戻ってきました。

「あ、ありがとうございます。」
「虫籠に何が入ってるの?」
「幼虫です。」
「え?幼虫??見てもいい?」
「はい。でも、土の中だから…(見えないよ)。」
だよね。幼虫だもんね。
でも、随分ジーーーっと見てたね、君(笑)。

可愛いなぁ、と頭をわしゃわしゃ撫でて、バイバイ、と、その少年とお別れしながら、またバイクを走らせていて。
ふと思いました。

あの少年は9月のわたしだな、と。
可愛い少年と重ねちゃ悪い気もするんですけどね。


でも、それくらい9月のわたしは、何かに取り憑かれたように目の前のことに盲目的になりすぎていました。
わたしの時々起きる悪い傾向で。仕事をする上で、「やらねば」が「やりたい」を飲み込んでしまうことが時々起きてしまうんです。
本来自分が(人生で)向き合うとても大切なことを切り捨ててでも、目の前の相手が仕事上、期待することや果たさなければいけないこと、責任を優先しようとしてしまう(そうやって、どんどん自分を知らず知らずのうちに追い込む)。

睡眠時間が削られ、
好きな音楽を聴きたいとも思えず、
吐き気と頭痛はひどくなり、
体が必死でピーピーと警笛を鳴らしてくれているのに、
蓋をして、まだまだ先へ進もうとしていた。
相当ヤバイ状態でした。

思考と体と感情が、完全に分離されているようなチグハグ状態。

そんな時に、指をパチンパチンと鳴らしてくれたコーチ、家族、友人のおかげで、ハッと我にかえることができました。


少年が落とした洋服のように、わたしも9月にとりこぼしたものがある気がしています。たった1ヶ月間の出来事なのに、あのままいってたら、病むことになっていた気もします。
でもね。
自分が大事にしなくちゃいけないもの、したいものに、改めて気づくことができて、今は再びしっかりとこの手に握りしめることができました。


大きく息を吸って。
この9月のことは、最大の学びとして栄養にさせてもらって。
10月から、えいや!と土の中から這い出てみようと思います。

…こう書いてみると、
9月のわたしは、少年が大事に抱えていた、幼虫の方とも言えるかもしれないですね笑


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