見出し画像

「お前が決めてええねん」

よくないなあと思いながらも、本を読む体力や気力を起こせないまま季節を横断してしまったこの3ヶ月。
難読ってわけではないのに、なかなか進まぬページと睨めっこしながら久しぶりに読んだのは、西加奈子の『おまじない』。

ようやっと読み終えたときに泣きそうになったのは、他者からの言葉や望まぬ経験を呪いとして自分自身を絡めていた何かが、少しずつ解けていく感覚があったからかもしれない。

日常を生きるためには、些細なことにも闘いが生ずる。
環境に人に自分自身に、さまざまに。それによって受ける痛みは、真正面から受けるものというよりかは、ふと一人になったときに心の隙間に現れるもの。小さな芽を出したと思ったときには根を張っていて、絡みついている(しかもけっこうしっかり絡みついていて厄介)。
いつしかツタとなったそれらがとれないまま、気にしながら過ごしているうちに、月日をかけてより強く根付いてしまった痛みが呪いへと変わるのだろう。

そんな呪いに光を注いでくれるのが、西さんの物語。そしてその中で生きる人々の言葉たちだ。

「お前は呪われてるんと違うねん。おまじないはお前を呪ってへんねん。あとな、お前のすべてもお前を呪ってへんねん。お前がお前であること、例えばその髪の毛とか肌の色とか何、それはもちろんお前が選ばれへんかったもんやけど、お前はその容姿やから、その血やか、お前でおるわけやないねん。お前がお前やと思うお前が、そのお前だけが、お前やねん。」

「お前が決めてええねん。」

#西加奈子
#おまじない
#読書日記

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?