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「推す」という投資

この記事は考えたことのメモです。

「貧者のきん」(moneyではなくgold)という言葉が妙に好きです。これって真鍮のことです。真鍮を貧者の金というそうで。
私はパーソナルカラーがディープオータム骨格ストレートで、ドワーフみてえな衣類と装飾品が似合う性質なので、真鍮はアクセサリーでもインテリアでも大好きです。
でもそんな真鍮が貧者の金と呼ばれてて、ゴールドが使えない貧乏人の代用ゴールドみたいに言われてて、でも私は真鍮製品を見ると所有するかどうかの検討が始まるけどゴールドには全くそういう気持ちにならなくて、じゃあ金持ちだったら真鍮には見向きもしなくなるのかというとそうはならない気がするなあ、という。貧者の金、むしろちょっと誇らしくすらなってしまう言葉だなと思ってしまう。B級グルメ、みたいな。なんかそういう前置きなんですが。

タイトルとどう繋がるかっていうと「推し」「推し活」って「貧者の投資」だよなあ、と思ってる、という話です。推し活やってるすべての人間が貧乏人といいたいわけではなくて富裕層にももちろんそういう人はいるだろうし、ただ、前段の真鍮とゴールドのような関係ではあるな、という個人的な認識。

どこで読んだか失念してしまったんですけど、着想自体は私のひらめきではなく、「今のオタクのアニメ視聴は投資である」みたいなこと言ってた人がいまして。
いわく、「自分が見出して好きになったものがヒットしたと言いたい、自分がダメ出ししたものがコケたと言いたい、ために時間を差し出してアニメの1話を見るとかする」的な話で。

投資とは「差し出したコスト以上のリターンがあるとみなしてリスクをとる」という行為です。新作アニメの1話を見るのが楽しそう面白そうだからではなく「俺が見出したアイツ、やっぱやってくれたぜヘヘッ」と言いたいから見る、みたいな。だからヒットすると「やっぱ最高、神、傑作」って過剰に賞賛し、失速すると「俺はダメだってわかってたけどね、こういうとこがダメだってわかってた」と噴き上がる。
なるほどそれは確かに投資です。コンテンツが合う合わないだったのではなく、ギャンブルによって資産が増えた減ったという際の言動に近しい。

で、コンテンツを推すという行為が「投資」であるなら、コンテンツに出会った直後に「このコンテンツ最高」って関連グッズ全部買いまくる情報あつめまくるSNSもファンガ的なものに作り込む、心底心酔している、という自己暗示をかける(そういうように私には見えてしまう)のは、はちゃめちゃに「投機(より博打度の高い投資のこと)」であります。初期にこれだけ金と時間と感情をぶっこめばこの先自分は巨大なリターンが得られる、そう思って投機する。

情報商材ってあるじゃないですか、30万出せば毎月200万儲かるノウハウとツールをプレゼントします、みたいな。あれも「投機」ですよね。出会いたてのコンテンツにいろんなものを過剰にぶっこむの、単に惚れっぽいとか移り気とかエネルギーが強いとかじゃなく、そういう情報商材購入者に似た、リターンを期待した投機に見えてしまうんですよね。あとワンチャン狙って夜の仕事のお姉さんに貢ぐとか、そういう。リターンを期待する投機。いや、私は実際そういうハマりかたしたわけではないから、当人たちには全然違う世界が見えてるのかもしれないですけども。

だから「コンテンツからの裏切り」は、「自分にとって合わなくなったな、距離とるか次いこ」ではなく、「預けた貯金すっからかんにしやがって!! 全額返せ!!!!」みたいな勢いになる。投資、投機しているものがたくさんあったから。

これも投資と似ているところで、投資は余剰資金、「なくなってもまあしゃあないかと思える金額内でやれ」、ていうのは投資の基本です。生活費とか必要なお金とかを切り崩してやるのは投資ではないとすら言われます。ギャンブルです。

つまりコンテンツと適正距離を取れる人っていうのはこの、余剰資金で投資をしている人に近しいスタンスということです。アイデンティティを預けない、余暇の範囲の時間・リソース・予算で向き合っている。

とはいえSNSなど見てると派手に生活のすべてを捧げてるように見える暴れっぷりに憧れを抱いてしまったり、憧れと自覚していなくてもああいうふうに振る舞わないといけないと思ってしまったりしがちなのも確かです。自分の軸が細いとなおさら、ああいうわかりやすい行動原理、動機、指針がほしくなる。

じゃあどうしたら趣味を余暇の範囲で楽しめるかっていうと、結局「生活」しかないんじゃないかな……というのが今の私の考えです。
皿を洗うとか床を磨くとか、そういう、現実と自分の居場所が変化する些細な行動を積み上げること。あとは考えること。どら焼きを主食にしてはいけない。

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