【詩】俯いて歩く

ぴょんと点字ブロックをとびこえた幼子が、僕をイヤフォンが震わせて創った重低音の世界から連れ出した。腕を大きく振って、七分丈のジーンズの膝をしっかりと曲げて、全身でとび出していく。ピンクの半袖からあふれる二の腕が、むっちりと光を反射している。点字ブロックの向こう側の世界に着地すると、お母さんのヒールが太めのサンダルに向かって走り出す。
紺のプリーツスカートから伸びる日焼けした太腿とすれ違う。小麦色みたいなおいしそうなヤワさじゃなく、陸上部の短距離選手で煉瓦色のトラックの上の風、みたいな茶色。怠惰から諦めを汗で抜いて、太陽の恵みで灼き上げた肉。くるぶしのローファーが視界から消えた。
駅前を俯いて歩くと見える世界。

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