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マルチャミー・プルリア 1枚のカードが定義する遊戯王のゲーム性

中々面白そうなカードが追加されましたな。

登場から早12年と7年、今では遊戯王のゲーム性そのものを定義しているといっても過言ではない増Gとうらら以降でも珍しい程強力な抑止効果。厳密には「手札からの召喚・特殊召喚」に効果が掛かったり、手札から捨てて発動できたり(次元の裂け目が避けられる)、ターン1がなかったり、増Gと色々違うところはありますが、なんにせよ増G+このカードという体制で、後攻が耐えられる可能性は上がりそうです。

プルリアからにしても増Gからにしても、どちらかを発動することでもう一方(特に増G)を追加で発動する流れも考えられますし、その中で増G宜しく、他の誘発を引いて更に行動を抑えることも可能。効果欄の中では特に「自分フィールドにカードが存在しない」条件がゲーム性上偉く、これにより既存誘発のように、先行制圧する側が握ってる方が強い、という状況もなくなります。

このカードの登場により増Gへの禁止も噂されてはいますが、それは恐らく無いと思います。というよりも、それを行うのであれば、うららも「自分フィールドにカードが存在しない場合」に近い、制圧+うららでの使用を諫める効果に書き換えたものを刷るべきです。邪推ですが、開発も増Gうららが一向にデッキから抜けないことや、その相場が下がらないことによる、新規の獲得やゲーム性への悪影響を危惧しているのかもしれません。うららなんておかしいもので、いくら再録しても相場がワンコインを下回らない、デッキからも早々外れない。この汎用性は脅威的なもので、だからこそ新規が入りずらかったり、先行優勢が変わらなかったりする部分はあるでしょう。

プルリアが属する「マルチャミー」の、先の効果の冒頭に、他のカードの活用が示唆されている辺り、誘発を1テーマに収め、そのあと環境を鑑みつつ既存誘発を整理し、ゲーム性を見直す狙いがあるのかもしれません。現状の遊戯王はあからさまにインフレしており、特に11期の特定のテーマはバランスや相手とのやり取りを放棄したかのようなパワーをも持っていましたが、遂に見直しに本腰を入れ始めた予感がしています。


他方、この辺りの遊戯王のゲーム性に関する施策は、実は他のところから出も感じられたりします。それがハリファイバーから続く、マスカレやカオスルーラー、バロネスや咎姫などの強力な汎用の存在です。最近の遊戯王はどんなテーマでも着地が同じだと揶揄されがちですが、あれはもしかしたら意図的なものかもしれません。例えば今日海外で禁止となったバロネス、過去どんなテーマにも入っていたハリ。これらに共通するのは、「単発の汎用を超え、特定のテーマがこれらのカードの存在を前提に作成された感があり、そのカードが規制されれば、付随するテーマも自動的に弱体化する性質を持つ」、即ちテーマが依存する程のパワーを持っていることです。

この関係性上では、特定テーマに強力なカードを入れ込むよりも相当効率的に、1枚のカードの規制で大きな範囲のカードプールを弱体化させることが可能です。例えばバロネスが禁止になれば、相剣はバロネスがテーマカードではないにも関わらず、弱体化を免れません。他のテーマにしたってそうです。そもそもレベル10シンクロという、一時期まではかなりマイナーだったプールを日常的に見るようになったのは、それを出せるテーマを作ったからに他ならない。ハリファイバーはそういう施策、つまりゲーム性の根幹部分を1枚のカードに担わせることでの疑似的なスタン落ちを行う予行演習だったのかもしれません。(そういう意味では、エレクトラムもその内だと思います)

一方で、最近では展開デッキのあまりの速さにバッシングが向かいやすく、こんなことをする前にテーマの動きを抑えるべきだという声もよく聞かれます。自分的にも同意をしたい部分もありますが、実は遊戯王は展開だけではなく、コントロール、永続罠のメタも順当にインフレをしています。その為、下手に展開テーマのパワー自体をデフレさせると、今度はエルド等の低速型が理不尽と呼ばれるようになるイタチごっこにもなりかねません。

そしてこれは根本では商売。最早25年の月日の間で、例え結果的に一時テーマ多様性やゲーム性の部分まで面白みが無くなるほどの盤面叩きつけ環境に悪化(言うなればクソゲー化)するとしても、パワーカードを刷ることで売り上げが上がることは、客観的に見ても残念ながら事実であります。
では新規のテーマパワー自体を調整はすれどそこまで落とさずに、環境やメタを健全に回転させるにはどうすれば良いのか。ここで飛び出したのが、"その環境を定義するほどのパワーを持つ汎用シンボルカード"を作成することだったのではないかと思います。


マルチャミーは、そのようなシンボル性汎用カードを、今度は逆に1テーマに押し込め、そのテーマ内の関連(主にサーチ)での行動の線を監視、規制することにより、テーマ=誘発全体のパワーをコントロール可能にする試みではないでしょうか。

25年も実際的なスタン落ちを実装することなくカードゲームを展開し続けるのは、相当な難度と労力があるものだと思います。その実際的なスタン落ちの代わりに開発が生み出したのは、第一に制限改訂であり、それに引き続いての特定カード規制の影響による仮想的なスタン落ちだった。それを担うのは一部システムモンスターと誘発である。というのが今回の邪推です。
バロネス等の制圧モンスターがゲーム性をも担うように計画されているのであれば、誘発も同じように、ゲーム性の根幹部分として暫時見直されることでしょう。それらにより遊戯王のゲーム性が徐々に再定義されてくるかもしれません。今後のマルチャミーに期待。

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