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課題映像で感想会!今こそ観ておきたいドキュメンタリー「小さき探求者~変わりゆく世界の真ん中で~」

こんにちは。ブックラブ事務局です。

いつもは“本”にまつわるイベントを開催しているのですが、今回は課題映像を決めての感想イベントにチャレンジしてみました。

課題映像は、ブックラブ会員から推薦のあったNHK制作のドキュメンタリー『7人の小さき探求者~変わりゆく世界の真ん中で~』です。

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ETV特集「7人の小さき探求者~変わりゆく世界の真ん中で~」
└https://www.nhk-ondemand.jp/goods/G2020106790SA000/
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各界のキュレーターたちが印象に残ったNHKドキュメンタリーを推薦する「このドキュメンタリーがヤバイ!2020」にも選出された本作。子どもから問いかけられる真っすぐな問いに、心揺さぶられ、互いに意見を交換することで気づきの多い回となりました。くしくも”7人の”ブックラブ会員で開催された本イベント。どのような意見が出たのか紹介します。

「7人の小さき探求者たち~変わりゆく世界の真ん中で~」とはどんな作品?

東日本大震災をきかっけに全国に先駆けて始まった対話を通じてこどもが考える力を育む授業「p4c(ピーフォーシ―)」を行う気仙沼の小学校6年生7人を追ったドキュメンタリー作品。図らずも2020年に発生した新型肺炎対策のため、臨時休校を経てそのまま卒業を迎えるという「大人の決定」を受け入れざるを得なかった子どもたちの生の表情や声、振り絞るように出される大人への問いが印象に残る。


▼作品の印象について


「スッキリとした結論は出ないけれど、それこそがこのドキュメンタリーを観る意味なのかもしれない。ドキュメンタリーから感じ取ったことや、湧き上がってきた自分の感情をすくい上げることがこの作品を観る意味なのかも…」とイベントの最後で参加者がポロリとこぼした今回のイベント。

まさにその通り。みなさん思い思いに着目した点や、印象に残ったシーンについて自分を振り返りながら、丁寧に言葉を紡いでくれました。印象に残った箇所として発表された意見を紹介します。


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「学校があるうちは、気になったことを何でもパソコンで調べるのが楽しい!と言っていた男の子が、休校以降は調べることに興味を持てなくなったと言っていた姿が印象的だった。みんなで問いを立てて話し合う機会、学校生活こそが、彼が考えたり調べたりする動機になっていたんだなと気が付いた。」
「臨時休校の知らせを聞いて、子どもたちが泣き出すシーンで思わず泣いてしまった。当時は、学校が休みになったんだな、今までと違う自粛生活が始まったんだな…くらいの漠然とした捉え方だったが、学校という日常を失う子どもの気持ちに寄り添っていない自分に気が付いた。子どもの立場になれば、大人の世界とは道理が違うし、受け止め方も全く異なることをこの作品を通して感じた」
「子どもがテンポよく質問をお互いに投げかけるシーンが非常に印象的だった。質問したい相手にボールを渡す、渡されたら答えるという仕組みもとてもいいと思う。誰が今問われているのか?答えるのは誰なのか?といった点が視覚的にクリアになるのは良い仕組みだと思う。やってみたいが、大人になった今だと遠慮してしまってできないとは思う。」

「いじめについて子どもの母親が語るシーンが印象的だった。なぜ、いじめはやってはいけないの?という問いにしっかり答えられる人はいないのでは?と思ってしまった。理由を説明できないことを子供に押し付けていることは多いのかもしれないと、番組を観ていてふと考えた。」

「考えることが大事だよね、という場を作っている大人がいることも忘れてはいけないことだと思った。子どもの考える力を育む場も、最初からうまくいったわけではないのだろうなと。きっと、最初は沈黙の時間が続いたり、うまくいかないことが多かったと思うが継続し続けたからこそ今の形になったのだろう」
「うまく言葉が出てこない男の子が自分に似ていると思った。輪になって人から突然問いかけられたときは「考え中」と答えたけれど、p4cの授業が終わったあとから振り絞って感情を言語化していた。そして、その場で意見が言えなくても、あとから言語化した子どもをちゃんとすくい上げて焦点を当てていた大人がいたことはすごいことだと感じた。」
「この番組や授業を通して逆に大人の方が成長しているのではないか。子供が「大人ってつまんない」とか「大人になりたくない」というのは、周りの大人がそういうつまらない大人に見えているのかもしれないと反省した。」

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一通り意見が出たあとは、番組中に一人の女の子からディレクターに投げかけられた非常に難しい問いについて話が広がります。

その問いとは「将来の夢」について先生に聞かれ、今の自分は何者にもなれていないのか?と疑問を抱く女の子からディレクターが言葉を引きだそうとして逆質問を受けるシーンです。


ディレクター「今の自分は何者だと思う?」               女の子「じゃあタブチさん(ディレクター)は今なんですか?プロデューサーですか?カメラマン?って答える?マイク?」                     ディレクター「みんな肩書はディレクター、カメラマン、音声マン」              女の子「自分は何ですか?って聞かれたときに仕事を言うの?そしたらわしは小学生…?でも、たぶんそういうことじゃやない」


ディレクターもそのときの答えがいまだわからないというこの質問。

ブックラブでも、すぐに答えてくれないことに一人の大人としてもどかしさを感じたという意見や、自分も答えることはできないが、答えがないことは考えることすら放棄してしまっていると気が付いた。答えがなくても考え続けることが大事なのかも…といった意見などが交わされました。

話は「大人と子どもの違い」「いつから大人と言えるのか」と言った話題に展開していき、『ソフィーの世界』を引用したり、ウィリアムワースの『虹』にもあった「感動することができなくなったときに子どもでいられなくなる」…など、他の作品や、自分の仕事や経験に基づいて話が展開されていった様子が印象的です。

答えや着地点はないブックラブ史上最高にモヤモヤする回となりましたが「自分の意見を発表したり、お互いに触発されあい話題が広がる時間はなかなか大人になると持つことは難しいので良い時間だった」という感想を頂戴するなど、みなさん得るものはあった様子。

他にも「すごく有意義な時間だった。色々な考えを聞けて、更に自分も考えるきっかけになった」と言った感想や「話したいことはまだまだあったけれど、時間を気にしてしまった自分はもう大人になってしまっていると思った。みなさんが経験や知識をもとに話をされていて、ドキュメンタリー内の対話とはまた違った形での対話が見られて面白かった」という感想をいただきました。

ブックラブの担当者も、当作品の女の子の問いに対する答えが見つからずモヤモヤを継続していますが、定期的に観返したい作品のひとつになりました。

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ブックラブでは本以外のおススメ作品も会員同士で紹介するなどして交流を深めています。公式Twitterにもコミュニティ内で出た作品を紹介したことがありますので、気になる方はチェックしてみてくださいね。


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