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作家・穂波 了が選ぶ 私のおすすめミステリ 第2回

手に汗握る衝撃的な展開やドキドキの伏線回収など、数多くの人気作品が生まれる“ミステリ”ジャンル。そんな作品を生み出している作家の皆さんは、かつてどんな作品に出合い、そしてどのように自身の物語を生み出しているのだろうか?
今回は2024年8月2日に『月面にアームストロングの足跡は存在しない』を上梓した作家・穂波了さんに、おすすめのミステリ作品を伺いました!
現役作家が語るおすすめミステリという、カドブンならではの貴重なインタビューです!

――穂波さんおすすめのミステリ作品と、それぞれおすすめの理由も教えてください!

1:『ビーチ』アレックス・ガーランド(アーティストハウスパブリッシャーズ)

アレックス・ガーランドという海外作家の名作です。映画化もされました。映画よりも原作の方がいいかと思います。日本人にはあまり根付いていない、海外バックパッカーの感覚とガーランド氏の言語感覚が面白く、自然と物語世界に没入してしまいます。20年以上前の作品ですが、今読んでも古臭くはないかと。余談ですが、映画の中で主演のレオナルド・ディカプリオが芋虫を食べるシーンがありまして……。芋虫嫌いの方はトラウマになるのでご注意ください。僕はそのシーンだけ毎回、必ず目を閉じます。

2:「酔歩する男」(『玩具修理者』所収)小林泰三(角川ホラー文庫)

『玩具修理者』という日本ホラー小説大賞短編賞作品に併録されている中編小説です。角川の作品を入れておかなければ……と思ったわけではなく、本当に好きな作品です。ジャンルとしてはミステリではなくホラーですが、主人公に降りかかった一つの謎を解く、という意味では珠玉のミステリです。読書で眩暈がして足元がふらつく、という経験をしたのは後にも先にもこの作品だけです。

3:『X雨』沙藤一樹(角川ホラー文庫)※電子書籍にて購入可

これも角川ホラー。当時、衝撃を受けた小説……いや、小説なのかどうかもわからない、文章。この著者さんが抱えた圧倒的な孤独のようなものに囚われ、何度も読み返しました。今紙媒体で手に入れるのは難しいかもしれませんが、興味があれば是非読んでみてください。ものすごく好きか、ものすごく嫌いか、どっちかだと思います。
※電子書籍にて購入可能

――海外ミステリからホラーまで、幅広くご紹介いただきありがとうございます!
穂波さんが作家になることを決めたきっかけ、またミステリ作品を書くようになったきっかけはどのようなものだったのでしょうか?

僕が作家になりたいと思ったのは、若いときに角川ホラー文庫でエンタメのるつぼのような作品群に出合ったからでしょうか。言わば、祭りの火に寄っていった蛾のようなものです。当時は本屋の本棚の前で今日は何を買おうかと何時間も費やしていました。角川ホラー文庫の棚は格好のえさ場で、棚の端から端まで買って読んでいたこともあります。

――ミステリ作品を執筆するうえで、作品のこだわりや意識している点はございますか。

ホラーを読んでいた流れでホラーを書いてみて、それを日本ホラー小説大賞(現在の横溝正史ミステリ&ホラー大賞)に応募してみました。すると幸運なことに最終候補まで行くことができたので、それからも作品を書いて応募をするのが習慣になりました。ただ、途中で「あ、自分はホラーあんまりうまくねぇな」と気づき、続いてミステリの新人賞に挑戦することにしました。読んでいてぞわりとする文章表現がキモになるホラーより、トリック作りや意外な犯人像がキモになるミステリの方が、理系の僕には合っているかなと考えたんです。特に犯人は、誰にも予想できないように、とこだわっています。
ま、ミステリもあんまりうまくないんですがね。

――穂波さんの創作の源流には、ホラーの存在が大きく関わっているんですね。貴重なお話をお聞かせくださり、ありがとうございました!
最新作について、着想のきっかけと読みどころをお伺いできましたら幸いです。

今回の『月面にアームストロングの足跡は存在しない』を書いたきっかけは、10年位前に世界中で流れたある噂です。1969年のアームストロング船長たちの月面着陸はアメリカの捏造だ、という。(おそらく)根も葉もないただの噂ですが、いつかそれに関する話を書きたいと考えていました。

宇宙飛行士というのは、宇宙だけを見て任務を遂行する人たち、だと僕は勝手にイメージをしています。ですが、主人公のコウタは心のどこかで地球に惹かれている人物です。アカネは宇宙よりも自分の子供のことを考えている母親です。そして最年少のキャサリンには、不安に耐えられず周りにキレ散らかすような弱さがあります。3人とも「完成された宇宙飛行士」にはなり切れていない人物たちです。
そんな主要登場人物の3人が成長していき、それぞれの決断を下します。その決断に、今作でやりたいことはすべて込められたかと思います。お手に取っていただければ幸いです。

――アメリカの有人月面着陸は、他国は成しえていないことから「本当に月に着陸したのか?」という噂が絶えないですよね。
本作ではアポロ11号は月面に着陸しておらず、アームストロング船長の足跡を捏造するというミッションをきっかけに、地球から約38万km離れた超極限状態でのサバイバル・ミステリが開幕します。
コウタ、アカネ、キャサリンという主要登場人物3人の成長物語と共に、ミステリ好きな人にもSFファンにもおすすめな一冊なので、ぜひみなさんも手に取って楽しんでみてください!

『月面にアームストロングの足跡は存在しない』あらすじ

新世紀の月開発プロジェクト「アルテミス5」。同計画のクルーとして月軌道プラットフォームゲートウェイ(LOP-G)に滞在する六人の男女は、NASAから不可解な指令を受ける。曰く「1969年のアポロ11号は月面に着陸していない。この事実を隠蔽するため、アームストロング船長の足跡を捏造して欲しい」というのだ。船長のロバートとヴェテラン宇宙飛行士のジョンは、この指令に「従うべき」という立場をとるが、副船長のサイラスと民間人クルーのキャサリンは「人類への冒とくだ」として強硬に反対する。日本人宇宙飛行士コウタ・イシグロと医師アカネ・モチダは、態度を決めきれない――。船内がバラバラに分裂する中、突如として制御を失った人工衛星がLOP-Gに激突する……!

地球に生還できるのは、誰なのか? 捏造ミッションの真相は、何なのか?
地球から38万km、超極限状況のサバイバル・ミステリ!

書 名:月面にアームストロングの足跡は存在しない
著 者:穂波 了
発 売:2024年08月02日
I S B N:978-4-04-115068-9
定 価:1,705円 (本体1,550円+税)
判 型:四六判
詳 細:https://www.kadokawa.co.jp/product/322402001510/

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