25歳OLと七夕

「たしかにあれがみんな星だと、いつか雑誌で読んだのでしたが、このごろはジョバンニはまるで毎日教室でもねむく、(略)なんだかどんなこともよくわからないという気持ちがするのでした」

そんな「銀河鉄道の夜」の冒頭が思い出されるほど、このところ毎日眠い。後ろから重たいヴェールをかぶせられてるみたいな感じで、朝の電車で寝て、1時間の昼休みは簡単にご飯を食べたらあとはめいっぱいまで爆睡しちゃっている。今度予定している自費出版のために、朝と夜ひたすら文章を書いたり消したりしていたからかもしれない。クマができながら何度も直した原稿、今朝、無事に入稿できてほっとしている。

今日は支店の当番でコミュ力の高い先輩と一緒だったから、昼に眠るどころか、ほとんど1日中、何かとお喋りしていた。コミュ力パイセンは会社の人のモノマネがむちゃくちゃうまかったし、「夏だからね」を合言葉に、お互いに始まったばかりの今の恋愛について語った。
ダイエットしなきゃと思ってて、と話をすると、あーそっかぁとなぜか残念そうなので、聞くと、コンビニで何かお菓子を買ってきてくれようとしてたらしい。

そんなん!!いいんですか!お願いします!!!とダイエットを一瞬で横に置くわたし。パイセンはよしきたという感じで、パソコンでセブンのスイーツラインナップをみながらあっこれがいいと呟いて出ていき、自分と私にミルクレープを買ってきてくれた。なんか、とてもうれしかったなぁ。

そして、今日は七夕だね。
2022年の7月7日は、青空に白い半月が浮かんでいた。
うちの支店は下町にあるので、本社のあるスーツ姿の人達が早足で行き交う街とは違う、のんびりした暮らしの風景がある。仕事帰りに小学校2年生くらいのランドセルを背負った子供と親が並んで歩いているのと何度かすれ違った。学校で何か行事があったのか、子供たちはみんな手に、藤色や金色の画用紙でできた星を持っていた。
横断歩道の反対側に向かって元気に叫んでいる男の子もいれば、だまってお父さんと手を繋いでいる女の子もいた。その女の子は星を持ったまま、なんだかしょんぼりして見えていじらしかった。楽しい七夕の日を過ごしてほしいなぁと勝手に思った。

子どもは学校でクラスメイトたちと机を寄せ合って星をつくり、短冊に願いごとを書き、歌をうたったかもしれない。
パイセンは回る椅子をギィギィ鳴らしながら二、三度、乙姫(彼女か、もしくは不特定の女の子)に会いたいよォと言っていた。

わたしはというと、ちょっと七夕っぽいことしたいななんて思い家の近くの花屋でスモークグラスを一束買った。
スモークグラスはイネ科の草で、すきっとした緑の葉と、小さな小さな光の粒が無数にふきだしたみたいな花穂をつけている。清潔で、のどかで、とてもかわいいのだ。

久しぶりに部屋に植物を飾れる〜とるんるんで帰り、高く積み上げた本のタワーの側にあった花瓶をとった。
そしたら。
大きな音を立てて、タワー崩壊。
太宰治やサガン、村上春樹、大江健三郎などの文庫本、ジョジョのコミックス、ストーンローゼスやラブサイケデリコのCDがごちゃまぜに雪崩れた。硝子の小物入れが落ちたりもしたけどなんとか割れていなかった。あわや、大惨事。なんとなく置いた花瓶はいつのまにかタワーの大事な支柱になっていたらしい。
とうとうか。。。と思いつつ冷静に写真を撮り、家族のLINEに送る。
妹はずっとこのタワーが崩れるのを楽しみにしている節があったので、しばらくして「わあーーーーいっ!笑」と返事があった。

とりあえずスモークグラスを飾り、この機会に本を綺麗に整理しようと週末のお掃除を決心する七夕の夜。

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