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数字を使わないほうがいいこともある

社会人になって最初に叩き込まれることのひとつに、「数字で示す」があります。

「売上が少し減りました」と報告すると注意されます。

  • 売上が前年比で8%減少しました

  • 売上が先月と比較して2,870万円減少しました

こんなふうに、具体的な数字で示すように指導されます。
報告書だけではなく、セールスの世界でも数字は多用されます。

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みたいな、胡散臭い広告なんかでは特に多用されます。数字テキトーだから正確なデータに困らないですからね。創作で書いてるだけなんで。

会社で数字を使うよう指導を受け続けると、「数字で語るのが正解」「数字は万能」のように錯覚してしまうことがあります。

しかし、それは違います。

数字は、決して万能ではありません。

例えば外回りから帰ってきたときに内勤のスタッフから、「外寒かったですか?」と聞かれたとします。このときに

「17℃だったよ」

と答えるのは正解でしょうか?

間違いなく正確ではあります。暑いとか寒いとか、フィーリングには主観がともなうので、「17℃」と具体的な数字を伝えることで、誰にとっても客観的な気温を伝えることができます。

……とは限りません。

17℃が誰にとっても客観的な気温だと思ったら大間違いで、多くの人は17℃がどれくらいかイメージすることができません。これでちゃんと伝わるのは、毎日ニュースを見ていて、昨日が19℃だったことを把握している人だけです。

それ以外の人にとっては、「それって……寒いってことで合ってますか?」と、かえって理解を妨げてしまいます。

こういうときは、「むっちゃ寒かったで。雪降るんかと思ったわ。」「昨日よりちょっと寒いな。知らんけど。」「寒いから帰るときマフラーしたほうがええで。知らんけど。」といった、数字を使わない主観的なフィーリングを伝えてあげるほうがよく伝わります。知らんけど。

実はセールスの世界でも、数字を使わないほうがいい場合があります。

こんな有名な話があります。

あるおばあさんが、夜が寒くて耐えられないのでストーブを買いに行きました。販売員に「このストーブは夜でも暖かいのかい?」と尋ねると、詳しい販売員は、省エネだとか、熱効率が何%アップしたとか、ありとあらゆる数字を使って説明しました。ひとしきり説明が終わったあと、おばあさんはその販売員に質問しました。「で、そのストーブは夜でも暖かいのかい?」

求めているのが数字とは限りません。主観的なフィーリングを求めていることだって多いのです。

つまり小さじ2……って言われても料理しない人は困る

会社では、主観をともなうフィーリングで分析された結果で経営判断を下すわけにはいかないので、客観的な正確さを担保できる数字を使った回答が求められているだけで、ある意味特殊な環境なんです。

特にね、同僚とか部下と会話するときは、数字ばっかり使っていると冷たい人だと思われますから。客観的なデータじゃなくて、自分の主観的なフィーリングを伝えましょうね。

たとえば自分が部長から注意を受けたとしたら、

「課長、さっき部長から呼び出されてたの、大丈夫でした?」
「ああ、大丈夫だよ。2日前のミスの件で、3分ほど注意を受けただけだから。」

って正確に答えるよりも

「課長、さっき部長から呼び出されてたの、大丈夫でした?」
「あれな。やばいで。死んだわ。終わった。めちゃめちゃキレられた。降格やわ。新入社員に。ほんでむっちゃ長いねん。一生終わらへんかと思ったわ。」

ってオーバーに答えたほうが、「ああ、この人いつも通りだから大丈夫だな」っていうのが伝わります。知らんけど。

以上、データがないので「定性的な観点から申し上げますと」を乱発していたら、クライアントから「定量的な見地からもご報告願います」とマジレスされて、明日部長から怒られる予定の35歳からのアドバイスでした。

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