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手紙 ~拝啓 三十五の君へ~

23歳の時に株式会社アントレストという居酒屋を経営する会社を起業し、14年。
38歳の時に株式会社焼肉ライクの社長になり4年。
約18年に渡り、社長をやってきた。

そして、新たに株式会社カチアリを立ち上げた。

株式会社アントレストは創業社長、株式会社焼肉ライクはサラリーマン社長と全く性質が違うのだが、株式会社カチアリはまた違って、今まで経験したことがない、ひとり会社。


ひとりって、なんて身軽なんだ。


それが今の率直な感想。焼肉ライクをやめた瞬間に、もうこれで火事の心配をしなくていい。食中毒の心配をしなくていい、と肩の荷がおりた。

1店舗で100年に1回の火事が起こる確率だとしたら、100店舗あれば1年に1回火事が起きる。

食中毒もしかり。そしてチェーンである限り、1店舗だけで起きた問題が全店に波及していく。最近の某社のハンバーグ食中毒もしかり、某社のカエルが混入していた件もそうだ。

また、焼肉ライクでは資金繰りは順調だったが、創業した最初の会社では、常に資金繰りとの闘いであった。
お金が足りないことは日常茶飯事で、月末を過ぎると毎月今月も生き延びた、と胸をなでおろしていた。そんな中でも社員の給与をしっかりと払わなければいけない、というのはかなりのプレッシャーだったのを今でも覚えている。

資金繰りに追われてやせ細った僕を見て、当時の税理士の先生は僕にこう言った。

「有村さん、死兆星が見えていますよ。大丈夫ですか?」

※死兆星とは北斗七星の横に寄り添うように光る蒼い恒星。  その星が見える者にはその年の内に死が訪れると伝えられている。出典"北斗の拳"より。

当時は顧問先に対してなんていうことを言う税理士だと思っていたが、よく考えてみれば、死兆星は見えた人がその年のうちに死ぬとされているから、私ではなくその税理士に災難が訪れるはずだ。

事実、その税理士はその年に大病を患った。結果生還を果たし、今もカチアリの税理士をお願いしている。


話は脱線したが、今回はなぜ、私が株式会社カチアリを創業したかを記したい。

その話をするためには、今から8年前、私が35歳の時にさかのぼる必要がある。

当時私は株式会社アントレストの社長をしていた。魚を串に刺した焼鳥の魚版「魚串さくらさく」や天ぷら定食の「天ぷらすずき」など10店舗強を運営していた。創業から12年がたち、資金繰りに困ることはなくなっていたが、店舗数と業績は何年も膠着状態であった。

どうやったら業績を伸ばすことができるのだろう。私は悩みながら、その重圧から逃れる為に

毎晩、港区で「セイ!セイ!」とイッキを繰り返していた。

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