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【年刊連載】短編小説 土管のヒューム 第一話(再)
俺は土管。
土木の専門家たちはヒューム管と呼ぶ。
だからヒュームが俺の名前さ。
俺たちが地球に生まれ落ちたのは、もう50年以上昔。
俺たちというのは、俺と兄さんと姉さんだ。
3人で郊外の空き地の片隅にね。
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上に乗ってるのが幼き日の俺、ヒューム。
左下が兄さんで、右下が姉さんだ。
3人とも若いよなあ。
この頃の俺には、これといった夢などなかったさ。
空き地で遊ぶ子供たちを見てるだけで幸せだった。
カツオ君たちはよく野球をしに来ていたなあ。
ジャイアン君にはリサイタルのステージにされた。
ハハッ。もちろん土足でだよ。
兄さんや姉さんは、小さな子供たちの通り道になってたっけ。
どれもこれも懐かしい思い出だ。
でも、そんな幸せな日々も長くは続かなかった。
当時はトイレ水洗化の下水道工事まっさかり。
兄さんと姉さんはいち早く行き先が見つかって、空き地を去って行った。
やがて空き地には鉄線が張られ、子供たちも遊びにこなくなった。
大人たちが言うには、危険なんだそうだ。
俺はたった1人になった。
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寂しかったかって?
そりゃ、少しはね。
でもしばらくすると、子供たちの代わりに小鳥や埴輪が遊びに来てくれたよ。
犬や猫が雨宿りしてくれることもあった。
寂しさを紛らわせるには十分だったさ。
![](https://assets.st-note.com/img/1675128792931-4742QcVOVz.jpg?width=1200)
ある日、そんな俺にもいよいよ出番が回ってきた。
うれしかったなあ。
これからは世のため人のためになれるんだって。
住宅街の地中に埋められてからは、そりゃ一生懸命働いたよ。
365日。きれい、汚いなんて言ってられない。
ゲリラ豪雨なんかで、十分に役目を果たせなかったときには、自分の無力さを恥じたものさ。
そんな俺も今年でお役ゴメンだ。
ヒューム管の耐久年数はちょうど50年なんだ。
もうすぐ俺は、ペルセウス座近くで無数の星屑に戻る。
毎年夏には、流れ星として君たちの前に現れるさ。
もし見つけられたなら、ヒュームって呼びかけてくれよな。
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明日 続編公開
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