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【年刊連載】短編小説 土管のヒューム 第二話 【白熊杯みんな賞記念】


冬北斗三等星の自尊心


白熊杯でみんなの俳句大賞を頂戴しました!!
本当にみなさんのおかげです!
ありがとうございました!
感謝感激です!
⛄️⛄️⛄️
⛄⛄


お礼と記念として、同句から短編小説を書きました。
昨年冬に書いた「土管のヒューム」の続編になりますので、未読の方は是非第一話からどうぞ。

第一話


第二話

俺の名前はヒューム。

元土管、今は星屑さ。

夏には流星群としてみんなの前に現れるんだが、冬はペルセウス座の近くを漂っている。

今日は三等星のメグレスのことを話したいんだ。

⭐️


いつものように北の空を漂っていたときのこと。

南の空がいつにも増して美しい夜だったよ。


南の空



ドゥべ、メラク、フェクダの二等星三兄弟が、こんな話をしていたんだ。



「冬の大三角形はいいよなぁ。全員一等星でしかも見事な正三角形だ。人が魅了されるのもわかるよ」

「それに引き換え 俺たち兄弟ときたら全員二等星で形も正三角形からはほど遠い。それに大きさときたらみじめと言うほかないよ」

「結局 星の魅力なんて生まれながらの輝きで決まってるのさ。俺たちにはどうしようもないよ」

「まあそう言うなよ。下にいるメグレスを見てみろ。都会の光にも勝てない三等星なんだぜ。それに比べれば俺たち随分ましなもんさ」

「そうだな」「そうだよな」


⭐️⭐️

別の日のことだった。

今度はアリオト、ミザール、アルカイドの二等星三兄弟が、南の空を見てこんな話をしていたんだ。




「オリオン座の三つ星はいいよなぁ。俺たちと同じ二等星のくせに まわりの一等星のおかげで夜空でしっかり目立ってやがる」

「それに引き換え 俺たち三兄弟がいるのは一等星のない北の空だもんなぁ。せめて一つくらい近くにあれば もっと人の目を惹きつけられそうなものなのに」

「結局 星の魅力なんて生まれた環境で決まるのさ。俺たちにはどうしようもない」

「まあそう言うなよ。上にいる三等星のメグレスを見てみろ 。それに比べれば俺たち随分ましなもんさ」

「そうだな」「そうだよな」

⭐️⭐️⭐️


俺はメグレスのことが少し気になって話しかけてみたんだ。

一人で寂しくないのかいって。

そうしたら

「寂しくなんてないよ。それに一人でもない。僕はドゥべ、メラク、フェクダ、アリオト、ミザール、アルカイドと力を合わせて、旅人に方角を示してるんだ。たしかに南の星たちに明るさでは敵わない。でも僕たちチームは夜空のどの星よりも人の役に立ってるのさ」



だってさ。まいったよ。

メグレスだけが自分と仲間たちの魅力に気づいていたんだな。

その話を聞いてこんな句が浮かんできたんだ。


冬北斗三等星の自尊心



どうだ いい句だろ。


さて 三等星メグレスの話はここまでだ。

今日は話を聞いてくれてありがとう。


ひしゃくの柄のつけ根に三等星が見える夜には、「メグレス」って呼んであげてくれよな。

おっと、そうだ。

今年のペルセウス座流星群の時期には、俺にも「ヒューム」って声をかけてくれよ!

忘れずにな!


第三話(2024年1月発表予定)へ続く



白熊杯はまだまだ続くよ!!



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