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北海道高校入試2021解説【理科】[2]

 問題は、どうしん電子版 のWEBサイトにて閲覧できます。

[2]消化酵素のはたらきと実験手法

 [2]は生物分野から、消化酵素のはたらきを主なテーマとして扱いながら、実験手法についても問われる問題でした。実験操作については、どうしてそのような操作をするのかという部分の理解までを問われるような出題がされるパターンが各試験で増えてきています。

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問1(1)① ア ② イ
 「表1から」とありますが、「デンプンを分解する」に続く酵素名として①{ 「ア アミラーゼ」「イ リパーゼ」}の二択になっているので、「ア アミラーゼ」を表を見るまでもなく選択できます。 また、「ペプシンのようなタンパク質を分解する消化酵素」とあるので該当の消化液として正しいのは、「ア 胃液」です。消化酵素のはたらきと含まれている消化液・分泌される器官はセットで覚えておきましょう。

問1(2) ① ベネジクト液(「ベネジクト溶液」でもよい) ② イ
 実験1において、試験管Aが透明になったのは、消化酵素X(アミラーゼ)によりデンプンが糖に分解されたためです。したがって、糖を検出するために用いる試薬名を①に、その結果として表れる色を②に答えればよいです。糖の検出のための反応と言えば、「ベネジクト液(青色)」で糖が含まれた溶液に加えて加熱すると、赤褐色に変化します。中学理科で用いる検出反応のための試薬で加熱が必要なのは、ベネジクト液だけです。

問1(3) ① 対照 ② 試験管Cに含まれる消化酵素X、Yの濃度と同じにする
 「【 ① 】実験」という空欄があれば、ほぼ間違いなく「対照実験」となります。「調べようとしている条件以外の条件を同じにして行う」は対照実験のとても端的な説明です。空欄【 ② 】は、試験管A、Bに水1cm³を加えた理由の説明ですが、空欄の直前の「消化酵素X、Yの濃度を」だけを見ると「薄める」と書いてしまう気持ちもわかります。しかし、空欄【 ① 】でこの実験が対照実験であることを答えていて、酵素のはたらきを調べる実験をしていること、試験管A~Dで変化させているのは、酵素X、Yが含まれているかどうか(とその組合せ)であることをふまえると、なるべく実験の条件を変えないために、X液、Y液の薄まり具合が試験管A~Cで同じにすべきなので、空欄【 ② 】は、「試験管Cに含まれる消化酵素X、Yの濃度と同じにする」となります(消化酵素Xの濃度=消化酵素Yの濃度 ということではなく、試験管Aと試験管Cで消化酵素Xの濃度、試験管Bと試験管Cで消化酵素Yの濃度が同じということです)。この実験で、試験管Dは、酵素X、Y以外の実験操作や水によって反応が起きないことを確認するためのものです。

問2(1) ① ウ ② イ
 表1、表2の結果から検討します。表1、表2ともに、デンプン溶液が透明なら「デンプンを分解するはたらきがある」といえ、スキムミルク水溶液が透明なら「タンパク質を分解するはたらきがある」といえます。試験管C、Eの結果を見ると、いずれも透明になっていることから、空欄【 ① 】は、「ウ デンプンとタンパク質を分解するはたらき」があることが分かります。同様にして表3から試験管Gの結果を見ると、スキムミルク水溶液のみ透明になっていることから空欄【 ② 】は、「イ タンパク質を分解するはたらきのみ」があることが分かります。

問2(2) イ
 試験管Eと試験管Gで結果が異なっているのは、デンプン溶液の部分であることから、酵素X(X液)に着目する必要があります。ここで、選択肢②は、酵素Y(Y液)に関する実験なので、不適当と考えられます。また、選択肢④は、X液とY液の混合したものについて試験管Dと比較しています。もちろん表1でまとめたときのような条件では、試験管Dと比べる意味がありますが、今回は酵素液Xのはたらきの変化をみていることから、不適当であると考えられます。残るのは、選択肢①、③です。選択肢①により、X液と水を約40℃で4時間あたためることで、ヨウ素液と反応する物質が生成されてしまわないことが確認できます。選択肢③により、酵素Xに対して、酵素Yが作用することで、酵素Xが失活したことを裏付けることになります。
 酵素の失活には、pHや温度といった条件もありますが、今回変化させた温度は、約40℃と多くの酵素がよくはたらく温度程度であることや、実験1などでも約40℃であたためていることから、温度による酵素Xの失活ではないことが予想され、酵素Yとの関係によるものであることが予想されます。

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つづく……

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 一見すると、消化酵素のはたらきの問題のようで、知識問題としてすべてを解けそうな勢いかなと思ったら、問2(2)は、正しく対照実験の設計ができなかったり、選択肢の読み比べに失敗したりすると、実は正答しにくいかもしれない問題でした。
 実験の手法について問題と言えば、「沸騰石を入れる理由」「試験管を傾けておく理由」などを、短文で回答させるものが頻出でしたが、今回の[2]はそういう点では発展的でしっかりとした理解を問う問題だったような気がしています。

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