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今、教育のICT化を推進せず いつやる?

 2020年5月11日、「学校の情報環境整備に関する説明会」(主催 文部科学省、運営 一般社団法人教育情報化推進機構)が、「GIGA スクール構想」YouTube チャンネルよりライブ配信されました。
 各自治体などで教育行政に関わる人が主な視聴対象で、「令和2年度補正予算の各施策について」が話題の中心ではありますが、「新型コロナウイルスによる緊急事態宣言を受けた家庭での学習や校務継続のためのICTの積極的活用について」についても、文部科学省からの力強いメッセージが発信されていました

コメント 2020-05-13 174615

コメント 2020-05-13 174648

令和2年度補正予算概要説明 〜GIGAスクール構想の実現〜
https://www.oetc.jp/ict/img/pdf/doc_20200511_01.pdf より

 およそ2時間ほどありますが、教育の情報化にどういったかたちであれ少しでも関わる人は必見ですし、最前線にいる現職の教員、小中高校生の保護者の皆さん、子ども・家庭支援の活動を様々な面でしている方々にも一見の価値ありです。
 語弊を恐れずに言うのなら、これから自分の関わる自治体・教育委員会・学校・先生がどんな取り組みを出してくるのか、注視して、やりきってもらうための声を上げるためにも、見ておくべきです

子どもたちの学びを絶やさないように

 たぶん多くの人が当初想像していた以上に、学校の臨時休校が全国的に長期化しています。子どもを持つ家庭には大きな負担感が押し寄せていることは想像に難くありません。
 新しいウイルスとの戦いの初期、急速に感染症が拡大するのを防ぎつつ経済活動へのダメージを最小化するという意味では、学校の休校措置はやむを得ないものだったと思います。しかし、戦いが長期化する中で、今の経済活動のことだけではなく、将来の経済活動を担う子どもたちの学びにももっと手厚い施策が迅速に打たれるべきではないでしょうか

 ICTを利活用した子どもの学びを保障する取り組みは、自治体・教育委員会・学校・先生・市民活動団体などなど様々なところで進められています。
 しかしながら、地域差やそれぞれの子どもが置かれている環境によって、保障されている学びの程度は、日ごろと比べものにならないほど大きな差が生まれてきているのではないかと、心配でなりません。今後、緊急事態宣言が部分的に解除されて一部地域で学校が再開されるとなれば、なおさらです(※緊急事態宣言を続けよ、休校は全国でそろえろ、さっさと休校をやめろということがイイタイわけではありません)。

<日本国憲法 第二十六条>
 すべて国民は、法律の定めるところにより、その能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利を有する。

 憲法に記されている教育を受ける権利が脅かされています。経済活動が待ったなしなのと同じように、子どもたちの学びだって待ったなしのはずです。

なぜ、教育におけるICTの利活用が遅れた?

 OECD生徒の学習到達度調査(PISA2018) ICT活⽤調査において「学校外での平日のデジタル機器の利用状況 」に関する設問(以下)については、「毎日」「ほぼ毎日」と答えた割合がOECD平均で20%前後であるにも関わらず、日本では3%前後(「学校の勉強のために、インターネット上のサイトを見る」だけは6.0%)とぶっちぎりで低い状況が見られました。

 ● コンピュータを使って宿題をする
 ● 学校の勉強のために、インターネット上のサイトを見る
 ● 関連資料を見つけるために、授業の後にインターネットを閲覧する
 ● 学校のウェブサイトから資料をダウンロードしたり、アップロードしたり、ブラウザを使ったりする
 ● 校内のウェブサイトを見て、学校からのお知らせを確認する

 今やICTを利用しない業種を探す方が大変なぐらい、一次産業にもICT(IoT)が進展している中でこの結果。なぜか。
 実は、同調査の「ネット上でチャットをする」はOECD平均が67.3%なのに対して、日本は87.4%、「1人用ゲームで遊ぶ」は、26.7%に対して47.7%と決してICT機器を持っていないとか日常的に使っていないということではないのです。

 今、多くの人が思い浮かべる日本の「学校教育」の中で行われている一生懸命に漢字や単語をノートに鉛筆で何度も書いたり、教科書の文章を書き写したり、板書を丁寧に書き写して綺麗なノートをつくることが「学習活動」と捉えられてしまっていていることが、一つの理由にあるように思います。
 残念ながらこれらの活動にとっては、むしろICTが無い方が都合が良いのです(ただ板書を書き写すだけなら、写真を取るなり電子黒板の書き込みデータを共有するなりすれば良いし、教科書の本文なんてテキストデータで配布できる)。これらの活動は、勉強した感というのを安易に持たせられる魔法の方法なので、なかなかなくしがたいのです。

子どもたちの「学び」を保障する

 世界規模ので未曾有の事態。平成初期にこんな事態があったら、子どもたちの学びを保障するのは、今ほど簡単なことではなかったでしょうが、ICTが発達した今の社会なら、子どもたちの「学び」を保障することは、本気で取り組めばできるはずです。
 文部科学省の担当者も先の説明会の中で次のように言っていました。

...... 子どもたち ICTを決して使わないんじゃないんです ......
...... 今の大人たちが学びにICTを使おうとしてこなかった ......
...... これをなんとかしなければならない ......
...... 取り組んでいるところはどんどん取り組んでいる。子どもたちの学びを絶やさないように、子どもたちの学びをしっかり保障しようとするために努力している。ところが何にもしないところはさーっぱり何にもしない。......
...... こういう問題意識があって予算がついたんだということを、是非、皆様十分ご理解いただきたい。......
――学校の情報環境整備に関する説明会(2020年5月11日)「新型コロナウイルスによる緊急事態宣言を受けた家庭での学習や校務継続のためのICTの積極的活用について」文部科学省初等中等教育局情報教育・外国語教育課長 髙谷 浩樹 氏 より

今、私たちにできること

 今の子どもたちの学びは、何年、何十年先の日本社会がどうあるかにつながっていると思います。社会を作るのは人です。教育基本法には、教育の目的として「人格の完成を目指し、平和で民主的な国家及び社会の形成者として必要な資質を備えた心身ともに健康な国民の育成」が記されています。

 現場の先生・教育委員会・自治体で教育行政に関わる方は、今すぐ本気で取り組んでください。できない言い分けはなしです。
 学校に通うお子さんをお持ちの保護者の皆さん。学校任せではなく、PTAの活動や地域での活動などで、お子さんたちの学びがいかなる時でも保障されるように、環境整備の推進や学習活動の在り方の変革が行われるように声を上げていきましょう。
 ICTの技術に長けたいろんな皆さん。ぜひ教育界隈に知恵と技術を貸してください。もちろんタダでなんて言いません。そんな予算でできねーよと突っぱねるところは突っぱねましょう。皆さんご存じの通り、ICT設備を中長期的に安定的に運用していくには、それなりにコストが必要ですよね。

 「教育のICT化推進をいつやるか? ――― 今でしょ!」

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