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ファースト・リパブリック銀行の破綻と、地銀不安から商業用不動産への波及

【FRC破綻】

ファースト・リパブリックバンク(FRC)の破綻背景を詳しくご紹介します。

FRCは、シリコンバレーの富裕層を対象に「インタレストオンリー」の大型不動産ローンを提供していました。
これは、利息の支払いが最低限度だけで、元本返済がないというもので、多くの顧客から人気を博しました。そのため、銀行の資産規模は急増し、数年で倍増するほどの融資を行いました。

しかし、金利が急上昇したことで、資金調達コストが高まり、同時に利鞘が急速に悪化していきました。
このため、金利リスクの管理に失敗し、経営破綻に至ったのです。

現在、米連邦預金保険公社(FDIC)が公的管理下に置いていますが、JPモルガン・チェースによる買収が決定されました。このスピード処理により、顧客の預金へのアクセスには影響がなかったとされています。

FRCの破綻は、不動産バブル崩壊や金利変動のリスクを考慮せずに、あまりにもリスクを負って融資を行ったことが背景にあります。銀行は、これからはよりリスク管理に力を入れることが求められるでしょう。

【FRC救済の概要とFDIC】

JPモルガン・チェースが、破綻銀行であるFRCの救済に関する重要な役割を担うことになりました。
この買収は、非常に有利であり、ファースト銀行の資産とローンを実勢評価額よりおよそ13%低い価格で取得できるため、税金とFDICへの1060億ドルを支払った後、統合費用を計上する前の段階でJPモルガンは26億ドルの利益を確保できるとされています。

FRCは、FDICの管理下にあり、JPモルガン・チェースは、FRCのローンポートフォリオの大部分について損失の最大8割の負担を申し出たほか、500億ドルの固定金利タームローンも提供することを表明しています。
JPモルガンは、全米の預金残高の少なくとも10%を保有しているため、通常の状況では、FRCを買収することは認められなかったが、今回は買収が許可されました。

JPモルガンは、FRCから融資債権約1,730億ドル、証券300億ドル相当、預金920億ドルを引き取り、買収を巡り26億ドルの一時利益を計上する予定です。
また、向こう1年半で20億ドルの関連再編コストを見込んでいるとのことです。

JPモルガンは、リーマンショック時にもベア・スターンズとワシントン・ミューチュアルを買収しており、今回も救世主の役割を果たしました。
ただし、以前の買収では長期にわたる訴訟や支払い負担が発生したため、今回の買収は隠れたリスクが少なく、シンプルなビジネスモデルのFRCを選んだと思われます。

【FDICと保険料見直し】

しかし、この買収には条件があります。

FDICが不動産ローンと商業用ローンについて、それぞれ7年間と5年間、損失の80%を負担することを約束したため、JPモルガンの自己資本比率のリスクアセット比率が高くなる問題が解決され、買収が可能になったのです。
また、FDICはJPモルガンに対して500億ドルの融資も提供しています。

FDICは、FRCを含む3つの銀行の破綻処理に伴い、約130億ドルの負担が発生すると試算しています。今後は、銀行に対する保険料の引き上げを通じて、預金保険基金の回復が期待されています。

一方で、アメリカの預金保険制度について、制度の見直しが議論されています。

銀行不安が高まると、預金保険でカバーされない大口預金が流出するため、制度の見直しは必要不可欠です。
FDICは、現在25万ドルまでカバーされる預金保険について、企業の決済用口座の預金保護上限を引き上げる選択肢を提示しています。

その他にも、保険対象を現状のまま維持するか、すべての預金を対象にするかの2つの選択肢があります。

FRCの破綻は、低金利下での銀行の過剰なリスクテイクの問題と金利急騰が銀行システムに与えた打撃を浮き彫りにし、預金保険制度の見直し議論を加速させる可能性があります。

今後もアメリカの金融業界は注目されることでしょう。

【地銀不安は、商業用不動産へ】

商業用不動産への貸し付けが多い中堅・中小銀行の破綻が相次ぎ、米国の商業用不動産市況が悪化していることから、金融不安の懸念が高まっています。

これによって、中堅・中小銀行は金融不安を背景に融資を絞ることになり、関連企業の資金繰りが悪化する恐れがあります。

このことがさらに金融不安を増大させることになります。商業用不動産価格も下落し、商業用不動産担保ローン証券や不動産投資信託(REIT)でも価格下落圧力が強まっています。

米国の中小銀行の経営破綻によって始まった金融不安は、商業用不動産市場に大きな影響を与えています。マネーサプライの前年比マイナスが問題視され、商業銀行の預金減少と商業用不動産ローンの融資残高の減少が起こっています。

小規模商業銀行預金 引用:Trading Economics



商業用不動産市場は、米国の商業用不動産の約4割を銀行が資金の出し手としているため、商業用不動産に対する信用収縮が最も影響を与えると考えられています。
商業用不動産ローンの融資残高の8割以上を中小銀行が占めており、多くの商業用不動産ローンが償還期限を迎えるなど、市場規模の悪化が懸念されています。

FRCは、不動産ローンのビジネスモデルを変え、流動性の高い債権に軸足を移す方針をとっています。
これにより、経営改善が期待されますが、多くの地銀が同様の取り組みを行うと、不動産業界に大きな打撃を与え、実体経済に悪影響を与えることが予想されます。
最近のデータによると、米国の銀行の預金は減少し、貸し出しの増加率は低下しています。
中小銀行による経営不安緩和の取り組みが続けられていますが、それが新たな銀行不安を引き寄せる可能性があります。

商業用不動産ローン 引用:Trading Economics


商業用不動産価格 引用:Green Street Commercial Property Price Index®


【M2の減少が引き起こすドル不安とは】

米国のマネーサプライ(M2)は、現金や引き出し可能な預金だけでなく、貯蓄性預金やマネーマーケットファンド(MMF)、定期預金などを含むお金の供給量を表します。
しかし、先月から4ヶ月連続でM2が減少したことにより、通貨主義者を含む多くの人々が不安を感じています。

M2の減少は、米連邦準備制度理事会(FRB)の通貨緊縮政策が原因で、政策金利の引き上げや量的引き締めが行われたためです。この結果、ドルが中小銀行からMMFに移動し、資金が短期浮動資金に変化していると言われています。また、都市銀行の貸出条件が強化され、資金供給が減少しているとも指摘されています。

この状況には、以下のような不安が存在します。

第一に、M2の急減が実体経済や物価に影響を与える可能性があります。これは、ドルの供給量が減少することによって、物価上昇や景気の減速を引き起こす可能性があるためです。

第二に、米国の業務用不動産市場がすでに価格の下落を見せ、さらなる銀行貸付の減少で悪化する可能性があります。これは、M2の減少によって銀行の貸し出し能力が低下することが考えられるためです。

第三に、中小都市銀行の破綻が業務用不動産価格の下落を招き、自己増強する悪循環が発生する可能性があります。これは、銀行が貸し出しを控えることによって、不動産市場が落ち込むことが懸念されるためです。

第四に、FRBが中小都市銀行を吸収合併させる政策が、ドルの不安定化を招く可能性があるとされています。これは、銀行の統合が進むことによって、市場の信頼性を揺るがす可能性があるためです。

M2の減少 引用:Trading Economics




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