【企業分析】モンゴDB(MongoDB)
概要
MongoDB, Inc.は、柔軟なスキーマでJSONライクなドキュメントにデータを格納するNoSQLデータベース、MongoDBのソース利用可能なデータベースの開発および商用サポートを提供する米国のソフトウェア会社である。
汎用データベース(DB)プラットフォームを開発しており、(有料版と無料版を組み合わせた)「フリーミアム」モデルで事業を展開し、サブスクリプション形式でソフトウエアを販売するほか、コンサルティングやトレーニングなどのサービスも提供する。2009年2月に無料ダウンロード版「MongoDB Community Server」、13年に商用向け機能付きの有料版「MongoDB Enterprise Advanced」、16年6月にマルチクラウド版DBaaSの「MongoDB Atlas(無料枠あり)」を相次いで投入した。
同社プラットフォームは09年2月以降、累計で2億4000万回以上ダウンロードされている。IBMやオラクル、マイクロソフトなど従来型DBソフトウエア企業のほか、DB機能を提供するパブリッククラウド大手(AWSやAzureなど)と競合関係にある。
プロダクト・ビジネスモデル
非構造化データ(画像や動画、テキスト等)を対象としたNoSQLデータベース/ドキュメントの形で管理するドキュメント型のソフトウェアを、一部クラウドサービス(Atlas製品)も提供する企業です。
データベースの最大手であるオラクルが開発するOracle Databaseは、リレーショナル・データベース管理システム(RDBMS)と呼ばれ、データを2次元の表形式で管理(Excelのようなイメージ)し、SQL言語を使用してデータを操作します。
RDBはデータ量が増えるとパフォーマンスが劣化するデメリットがあり、近年の非構造化データの急増に伴い、テーブル構造を固定することなく、様々な形式のデータをそのままの形で格納できる「NoSQL(Not Only SQL)データベース」(=RDB以外のデータベース)が活用されるケースが増えています。
従来のデータベース(RDBMS)はデータの一貫性保持が重要で、データの一貫性保持が必要ない場合にはコストが高い。
従来のRDBMSに格納するには事前にカラムを固定するなどスキーマ(データベースの構造・データの格納方法)を決める必要があったが、MongoDBはスキーマレスで多種多様な形式のデータソースのデータを取り込むことができる。
近年、非構造化データが増加しており、また変化が激しく事前にスキーマを決めずに開発しながら後からスキーマ(データ構造)を自由にデザインできる柔軟性に需要が高まっていた。
データ容量の拡張が容易で、スケールアウトしやすいためビッグデータの扱いが得意。
データが急増し続けるビッグデータ時代の追い風をうけてMongoDBは成長してきた。
また、既存RDBMSに分散したデータを手を入れずにデータ統合(データ集約)できるなどユースケースも多様で、スケーラビリティに優れる。
120%以上のARRエクスパンション・レートとコホートも優秀
レガシーデータベースからMongoDBへワークロードが移行。
MongoDB自体はソフトウェアライセンスがAGPLでオープンソースだがMongoDB, Inc.が開発の中心でサポートや付加価値部分を商用版MongoDB Enterprise Advancedとして有償サブスクリプションで提供しており、それが収益源となっている。
さらに、フリーミアムモデルのDBaaS(データベース・アズ・ア・サービス)であるAtlasも成長しており、サブスクリプション売上高の中身も徐々に変化。
2016年6月に発表されたAtlasは売上の18%を占めるほどに成長(2018年7月時点)。
AtlasはMongoDBのマネージドサービスの”MongoDB as a Service”
つまり、MongoDBによる公式の管理サービスつきで運用を代行してくれるため、MongoDB構築・運用のためのコスト(人件費等)が不要になる。
もともとインストール・導入が容易だったMongoDBがさらに使いやすくなり、使った分だけ支払えばいい従量課金モデルで、無料プランもあるフリーミアムモデル。
アトラスの売上高の大部分はセルフサービスと効率の良い顧客獲得スタイル。
AtlasはAWS、Microsoft Azure、Google Cloud Platformなどのクラウドサービス上で利用でき、停止時間ゼロでデータをMongoDB Atlasに簡単に移行可能。
パートナー企業も強力で、導入実績も豊富で顧客も増え続けている。
同社のセグメントは3つに分かれており、セグメント別の売上高は、以下の通りです。
・Atlas関連:1.56億ドル、前年同期比+85%
・その他サブスクリプション:1.02億ドル、前年同期比+29%
・サービス:0.08億ドル、前年同期比+17%
セグメント別の売上高構成比は、サブスクリプションが97%、Atlas関連が58%を占めます。
地域別の売上高構成比は、アメリカが60%を占めます。
MongoDBは、データを行と列で保存するのではなく、複数のJSONに似たドキュメントやコレクションでデータを表示する、ドキュメント指向データベースです。このドキュメントには、ネストされたドキュメントや配列などのタイプのキーと値のペアを使用し、ドキュメントごとに異なる構造をとることが可能です。
また、データ構造やスキーマを柔軟に変更できるだけでなく、セキュリティ、信頼性、効率性にも優れています。MongoDBは、高速かつストレージの要件も満たすデータベースだと言えるでしょう。
MongoDBの機能
では、MongoDBの主な機能をみてみましょう。
レプリケーション─レプリケーション(レプリカセット)を使ってデータのコピーを複数作成し、さまざまなサーバーに配置することが可能。この機能はデータのバックアップや災害対策にも有用で、サーバーに問題が発生しても、他のサーバーに保存されているコピーからいつでもデータを取り出すことができる。
インデックスの作成─ドキュメントのフィールドには、プライマリまたはセカンダリとしてインデックスを付けることができる。これにより、データベース内の検索パフォーマンスが向上し、ドキュメント全体ではなくインデックスに対して検索を実行できるようになり、検索速度が上がる。
アドホッククエリ─アドホッククエリとは、クエリ実行時に様々なリターンを出す一時的なコマンドのこと。MongoDBではレンジクエリ、正規表現(Regex)、フィールド検索が使用できる。また、クエリには定義したJavaScriptの関数も含まれ、特定のドキュメントフィールドを返すことができる。MongoDB Query Language(MQL)でアドホッククエリを即時更新することができ、企業のリアルタイム分析に便利。
シャーディング─シャーディングとは、大規模なデータセットを複数のデータコレクションに分散させる手法で、水平方向へのスケーリングが可能。シャードキー(単一または複数のレプリカを持つマスターキー)を選択して、コレクション内のデータ分散を決定し、シャード間でデータを異なる範囲に分割することができる。各シャードは個別のデータベースとして機能し、複数のシャードを用いて1つのデータベースを形成することで負荷分散につながるため、複雑なクエリを実行することが可能に。
ロードバランシング─同時並行性の管理が容易で、複数のクライアントからのリクエストを同時に様々なサーバーで処理することが可能。各サーバーの負荷を軽減し、一定のデータの稼働率と整合性を確保することで、拡張性の高いアプリケーションを実現。
ファイルストレージ─ファイルシステムGridFS(グリッドファイルシステム)が利用可能。GridFSには、データレプリケーションとロードバランシング機能があり、複数のコンピュータでファイルを保存することができる。また、GridFSには、MongoDBのドライバが含まれており、Nginxやlighttpd のプラグイン、または mongofilesユーティリティでアクセス可能。また、MongoDBでは、開発者によるファイルやコンテンツの加工も可能。
アグリゲーション─SQL句- GROUP BYの場合と似たような結果を得ることができる。集計の実行方法は以下の3種類。
集約パイプライン:ほとんどの場合はこの方法が最適。
単一目的の集約:1つのコレクションからドキュメントを集約。
mapReduce():集計結果を得るバッチ処理に使用。map関数はデータをキーでグループ化し、reduce関数が処理を実行。
cappedコレクション─データの挿入順を処理するコレクションタイプであるcappedコレクションをサポート。
市場動向
Redis, Cassandra, HBaseなど他の主要NoSQLを圧倒するマーケットシェア。
データベースエンジンランキングでもMongoDBは存在感がある。
業績
売上高(セグメント別)の推移
FY2022(2021年2月-2022年1月期)の売上高は8.7億ドルと、前年度比+48.0%、過去5年間で年率+50.1%となりました。
顧客数の推移
顧客数は3.3万件(前年同期比+33%)、Atlas採用顧客数は3.2万件(前年同期比+35%)となりました。
ARR(年間経常収益)10万ドル超の顧客数は1,307件(前年同期比+34%)となりました。
利益の推移
2022Q4の非GAAP 営業利益は▲0.01億ドル(前年同期比赤字幅縮小)、非GAAP 営業利益率は▲0.5%と、前年同期の▲9.4%から改善しました。
キャッシュフローの推移
2022Q4の営業キャッシュフローは0.22億ドル(前年同期比黒字転換)、営業キャッシュフローマージン(営業キャッシュフロー/売上高)は8.4%と、前年同期の▲10.9%から改善しました。
株主還元(配当、自社株買い)の推移
配当、自社株買いの実施はなしです。
経営者
CEO
CEOはDev Ittycheria(2014年に就任)。
MongoDB以前は、2001年にBladeLogicを共同設立し、BMCに9億ドルで買収されるまで同社の最高経営責任者を務めていた。2012年には、ベンチャーキャピタルのGreylock Partnersのパートナーになっています。
創業者
創業者は、ケビン・P・ライアン。
1963年生まれ。アメリカの投資家、起業家で、MongoDB以外にも、ギルト・グループ、ビジネス・インサイダーなど、ニューヨークを拠点とするいくつかの企業を設立しています。ライアンは、1996年から2005年まで、最初は社長として、後にCEOとして、ダブルクリックの成長に貢献しました。
ライアンは、2008年にドワイト・メリマンと設立したベンチャーキャピタル、アレイコープを通じて、企業の設立と投資を続けている。エール大学で学士号を、INSEADでMBAを取得しています。
株価推移
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