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本のある日常

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書店員として働く私が、本のことについて書いたエッセイ集です。
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#仕事

調子の悪さに比例して読書量が増えていく

年度末は忙しさのあまり調子を崩す人は多いと思う。 かくいう私もその一人で、この3月は膨大な仕事に追われ、また上司との面談を控え関係がギクシャクしてしまいストレスフルな状況だった。 私は生活の調子が悪くなると、すがるようにして本を読むクセがある。 そういうわけで、3月は27,143円分の本を買い、16冊の本を読むことになった。 どうして、つらいときに読書量が増えるのか。 自分の現状と似たような内容の本を読み、「わかる。つらいよね」と支えてもらいたいからである。 例えば、私は3

本と触れ合う時間のない書店員

私はふだん、書店員として働いているが、正直あまり本と触れ合えていない。 もちろん、仕事中はほとんどずっと本を触っている。 レジ打ちや品出し、返品作業だってそうだ。 ただ、触ってはいても触れ合えてはいないのである。 書店員としての仕事はけっこう忙しい。 大量の本を棚に出したり、メールで出版社とやり取りしたり、お客さんの問い合わせに対処したり。 そんな中だと届いた本の内容もわからず、ただただ棚に並べるような仕事になってしまう。 そんなふうにしていると、棚がどこかよそよそしく、軽

どうしようもなくなったときは本を読む

暗い本を買っている。 たとえば、最近買った本は『「死にたい」とつぶやく』だ。 ただ、ふだんからこういう本を読むわけではない。 さすがの私も気が滅入ってしまう。 じゃあいつ読むのかというと、もうどうしようもないほど落ち込んでしまったときである。 私は生まれながらにネガティブなタチで、定期的にすべてを投げ出して実家に帰りたくなる欲求に襲われる。 そんなときに本棚の奥から暗い本を引っぱり出してきて、読む。 暗い気分のときに暗い本を読んで、ずぶずぶと沈んでいくのだ。 そうして全身