マガジンのカバー画像

本のある日常

44
書店員として働く私が、本のことについて書いたエッセイ集です。
運営しているクリエイター

2023年6月の記事一覧

古典的名著はラスボスみたいなもの

人間失格、坊っちゃん、罪と罰。 有名人がすすめるの本といえば、大概こういった古典的名著である。 「私の人生を変えた本」などという特集で、岩波文庫の本が1冊あるだけで、急にそれっぽく見える。 ただ、普段あまり読書をしない人が、これを真に受けて「よし、この本が面白いんだな。読むぞー!」というのは危険である。 というのも、古典的名著はラスボスみたいなものだからだ。 私は書店員として働いているが、そんな私でも古典的名著は難しく感じる。 言い回しが独特だし、時代背景も違う。 「面白い

どうしようもなくなったときは本を読む

暗い本を買っている。 たとえば、最近買った本は『「死にたい」とつぶやく』だ。 ただ、ふだんからこういう本を読むわけではない。 さすがの私も気が滅入ってしまう。 じゃあいつ読むのかというと、もうどうしようもないほど落ち込んでしまったときである。 私は生まれながらにネガティブなタチで、定期的にすべてを投げ出して実家に帰りたくなる欲求に襲われる。 そんなときに本棚の奥から暗い本を引っぱり出してきて、読む。 暗い気分のときに暗い本を読んで、ずぶずぶと沈んでいくのだ。 そうして全身