第56回 将来の更なる円安への対策

円安の原因は、日本人の生産性が低いことです。
それなら生産性を上げれば良いだけの話なのですが、そう簡単には実行できません。
あなたの会社を見てください。
日々、生産性の向上を考えて、会社が一丸となって動いているでしょうか!?
社員も、一人ひとり生産性の向上を意識して業務に従事しているでしょうか!?

何度も書きますが、生産性の向上とは、タスクの整理です。
タスクを整理して減らすことが必要であり、そのために、マニュアルの作成や、IT、AIを活用するのです。
単に流行でAIを導入しても、それでタスクが減少しなければ意味がありません。
いや、逆に悪影響の方が大きくなります。

なぜなら、AIを使うために、新たなテクニックを社員が覚えなければならないからです。
覚えることで生産性が向上して、業務負担が少なくなれば良いのですが、そうならなければ覚える分、負担の増加です。
そうなると、社員は会社の方針に耳を貸さなくなり、会社の信用は大きく損なわれることになるでしょう。

そんな会社で、あなたが生産性の向上を目指しても、実現は不可能です。
出る杭は打たれるように、周囲はあなたを無視するようになります。
なぜなら、あなたが別の仕事を作っているように見えるからです。
あなたも、そんな会社に嫌気が差し、転職を考えることになってしまいます。
だから、会社側から本気で生産性の向上を言い出さない限り、無理をせずに流した方が良いのです。

ただ、流した方が良いのは会社の中だけです。
会社以外では、しっかりと生産性の向上を意識して、人生設計をしなければなりません。
なぜなら、前回書いたことに関係する、近い将来に日本人は災害級の大問題に遭遇するからです。

その大問題とは、既に皆さんもご存じの通りの「少子高齢化」です。
これも既に書きましたが、この問題は私が子供のころに既に問題視されていたものです。
それが、50年かけて具現化したという訳です。
この問題には、即効性の解決策はありません。
欧州諸国では、移民を受け入れることにより解決を図ろうとしましたが、結果的には大失敗でした。
それは、欧州諸国が移民の受け入れを停止する方向に動いていることが物語っています。
この大失敗の原因は、文化の違いです。
文化とは、歴史的に培われてきた「risk management」の一つなので、それを捨てさせることは「マイノリティー保護」を叫ぶ欧州諸国では不可能だった訳です。

この「少子高齢化」は、今の生産性の低さを更に押し下げる強い効果を持っています。
当然、このことは、今の政府も理解しています。
そのために打った手が、退職年齢の引き上げです。

退職年齢を引き上げれば、勤労世代が増加し、生産性を引き下げる効果を限定的なものにします。
しかしこれは、単に国民負担を大幅に増加させるもの以外の何物でもありません。
そもそも、退職制度と年金制度を創設し、「豊かな老後」をキャッチフレーズに強引に推し進めたのは政府です。
それを今さら反故にするのですから、政府でなく企業が実施していれば、詐欺と言われます。

本来の対策とは、勤労世代に負担感を与えることなく生産性を向上させる手法を模索することをすべきでしょう。
このことを後押しするように、法律や環境を整備することが、政府の仕事のはずです。
ところが、政府自身が生産性を向上させる手法を知らないからか、全くその気配はありません。

そこで我々は、自分の身や家族は、国に頼るのではなく、自分で守らなければならないことになります。
戦前までの日本は、家長制度が確立され、家族を守ることが家を守ることとイコールにされてきました。
しかし戦後になって、国が個々人を守ることで、家族同士の繋がりを希薄化させ、それが親類・縁者、隣近所、地域関係へと広がって行った訳です。
自分たちの身は自分たちで守らなければならないという意識が薄れたため、PTAや自治会、労働組合への参加を嫌がる人たちが増加したわけです。

が、結局のところ、自分のことは自分で守るという過去に戻ることになってしまいます。
そのために必要なことは、「狡兎三窟」の考え方です。
賢いウサギの巣には、出入りできる穴が3つあるというヤツです。
これまで何度も私は書いてきましたが、次回は再度説明します。

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